
静岡県河津町では、町のDX推進の一環として、LINE公式アカウントの拡張サービス「スマート公共ラボ」を導入しました。広報誌や回覧では補いきれなかった“即時性”の課題に対し、LINEを「デジタル回覧板」と位置づけ、住民サービスの向上と情報発信の強化に向けた一歩を踏み出しました。
豊かな自然に恵まれ、観光業を主産業とする河津町。しかし、多様化する住民ニーズへの対応や、災害時などの緊急情報を迅速に届けるためには、従来の情報発信のあり方を見直す必要がありました。
今回は、導入を推進された企画調整課の清水氏に、導入の背景や目的、そして今後の展望について詳しくお話を伺いました。
目次
住民と観光客、双方へ。
“即時に届く”発信への課題
— スマート公共ラボ導入前は、どのような課題を抱えていましたか?
清水氏:従来の情報発信は、広報誌や回覧、ホームページが中心で、丁寧に伝えることには適していた一方、速報性が求められる情報の到達に課題がありました。また、災害発生時には、住民はもちろん、土地勘のない観光客の方へ避難所の情報を的確に案内する仕組みも必要でした。

そこで、多くの住民が日常的に使うLINEを活用してプッシュ型の発信を加えることで、必要な人に、必要なタイミングで情報を届ける「デジタル回覧板」としての役割を担わせることにしました。
決め手は「使いやすさ」と、
観光地ならではの「防災機能」
— 導入を決定された主な理由は何だったのでしょうか?
清水氏:多くの職員が必ずしもスマートフォンの操作に慣れているわけではない中で、誰もが直感的に使えるシステムであることが重要でした。その点、「スマート公共ラボ」は利用者が見やすく、使いやすいデザインにこだわって開発されていると感じました。
また、観光地である当町の特性上、災害時に土地勘のない観光客でも、現在地から最寄りの避見所をすぐに検索できる機能は非常に心強いものでした。
— 構築段階でのエピソードを教えてください。
清水氏:システム特有の専門用語に慣れることや、チャットボットの企画・設計には苦労しました。特に、各担当課から具体的な意見を引き出すのが難しく、完成イメージを共有することに時間がかかりました。最終的には、私たち電算係がたたき台を作成し、各課に確認してもらう形で進行しました。
また、「利用者にとって本当に使いやすいものは何か」を突き詰めるため、メニュー構成からデザインの細部に至るまで、他自治体の事例を参考にしながら、徹底的に検討を重ねました。



多様な周知活動で利用を促進し、
便利な機能で満足度向上へ
— アカウントを広く知ってもらうために、どのようなプロモーションを行いましたか?
清水氏:より多くの方に友だち登録をしてもらうため、庁内や関係機関へのポスター掲示、町のホームページやSNSでの周知、回覧板での案内に加え、防災メールでも呼びかけを行いました。さらに、ご高齢の方にも親しんでいただけるよう、スマホ教室などの場で登録方法を直接ご案内するなど、デジタルに不慣れな方へのサポートも意識しました。
— 導入後、住民からはどのような反響がありましたか?
清水氏:こうした周知活動の結果、多くの方にご利用いただき、導入後の満足度調査では、ごみ分別や収集日に関する領域で特に高い評価をいただきました。特に、忘れがちな不燃ごみの前日夕方に自動で通知する機能は、「うっかり出し忘れることがなくなった」と喜ばれています。また、防災機能の根幹である避難所検索は、いざという時の安心につながっており、町全体の安全性を高める上で不可欠な機能だと考えています。


広報誌との役割分担で、
情報の「深さ」と「速さ」を両立
— 「広報かわづ」など既存媒体との役割分担はどのように考えていますか?
清水氏:LINEはあくまでプッシュ型で「すばやく知らせる」ことに特化した媒体だと考えています。一方で、広報誌や回覧板には、特集記事のように物事の背景や詳細を「じっくり深く伝える」という重要な役割があります。
それぞれの媒体の強みを活かし、LINEで速報を届け、関心を持った方には広報誌でさらに理解を深めてもらう、といった連携を図っています。デジタルとアナログの役割を明確にすることで、情報の「速さ」と「深さ」の両立を目指しています。

UX重視で「知る」から
「行動」への距離を縮める
ープレイネクストラボのサポート体制・対応についての印象をお聞かせください。
清水氏:構築の際は、細かいサポートありがとうございました。引き続き、何かありましたら相談させていただきます。
— 今後の活用予定や新たな展開について教えてください。
清水氏:今年度はDX推進計画を策定する予定です。今後は、単にデジタル化を進めるのではなく、UX(住民や職員の利便性)を重視し、住民の皆様からのご意見やニーズを伺いながら、LINEでできる手続きをさらに増やしていきたいと考えています。

具体的には、電子申請や施設のオンライン予約といったサービスを拡充し、配信で情報を「知る」だけでなく、そこから申請・予約といった「行動」までをLINE上で完結できる導線を目指します。まずは評価の高いごみ・防災の体験を核に、改善の余地が大きいと分かった手続き・証明といった分野へ段階的にサービスを拡張していく計画です。
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河津町では、多くの住民や観光客にとって身近なLINEを「デジタル回覧板」と位置づけることで、「待つ行政」から「届ける行政」へと転換し、持続可能な住民サービス提供の基盤を築きました。日常生活に欠かせないごみ収集情報のプッシュ通知や、観光地ならではの課題である災害時の避難所検索機能の充実は、住民と来訪者双方の安心・安全な暮らしを支える先進的な取り組みです。
今後は、さらなる機能活用を通じて、一人ひとりに寄り添った行政が実現されていくことが期待されます。 人口減少時代の行政サービス維持や、住民との新たなコミュニケーション構築に課題をお持ちの自治体様は、ぜひ一度プレイネクストラボにご相談ください。全国の自治体DXを支援してきた知見をもとに、それぞれの実情に合わせた最適な解決策をご提案します。住民と職員、双方にとってメリットの大きいLINEを活用した新しい行政の形を、一緒に創り上げていきませんか?



