【静岡県下田市】「下田市史」をLINEから購入。歴史・文化・福祉にも広がる下田市の電子申請

自治体の電子申請は、住民票の請求、税証明の発行、各種届出など「役所の手続き」を便利にするものとして普及が進んでいます。

静岡県下田市のLINE電子申請では、『年表 下田市史』『下田市史 資料編三 幕末開港』『松陰先生と我家』『下田公園の植物マップ』など、下田市教育委員会生涯学習課が刊行する歴史・文化資料の購入申請です。

下田市では、行政が長年にわたって蓄積してきた地域の歴史や文化に関する出版物を、LINEを入り口として購入できるようにしています。

さらに下田市では、「ヘルプマーク」の申し込みにもLINEを活用しています。

今回は、下田市の事例から、電子申請を「行政手続きをする場所」だけではなく、「行政が持つサービスや地域資産を必要な人へ届ける場所」として活用する可能性を見ていきます。

  • 自治体名:下田市
  • 都道府県:静岡県
  • 人口:18,549人(2026年8月時点)
  • LINE友だち数:3,693人(2026年8月時点)
  • 導入開始年月:2026年3月

行政情報を探すところから、手続きまで。

下田市では、LINE公式アカウントを行政サービスへの入り口の一つとして活用しています。

基本メニュー
くらしメニュー
結婚・子育てメニュー

現在のリッチメニューには、市ホームページやSNS、広報へのアクセスに加えて、「オンラインでの手続・申込」が用意されています。

税証明、住民票、戸籍、身分証明書、独身証明書などのオンライン請求のほか、ヘルプマークの申し込み、図書館の蔵書検索・予約などにもアクセスできます。道路上の動物の死骸や災害による道路・河川の損傷を通報する機能も用意されています。

LINEを情報発信SNSとして、だけではなく、

「調べる」→「申し込む」→「行政サービスを利用する」

までをつなぐデジタル窓口として利用しています。

その中でも、下田市ならではの活用として注目したいのが、歴史・文化資料の購入申請です。

市役所が販売する「下田市史」をLINEから申し込む

下田市教育委員会生涯学習課では、地域の歴史や文化財について調査・編さんしたさまざまな出版物を刊行・販売しています。

現在販売されているものには、

  • 『下田市史 資料編一 考古・古代・中世』
  • 『下田市史 資料編二 近世』
  • 『下田市史 資料編三 幕末開港』
  • 『下田市史 別編 幕末開港』
  • 『下田市史 通史編上 原始・古代・中世』
  • 『図説 下田市史増補版』
  • 『年表 下田市史』

などがあります。

さらに文化財シリーズをはじめ、

『下田公園の植物マップ』
『松陰先生と我家』

といった刊行物も販売されています。

こうした行政刊行物の購入申請に電子申請を使っていることは、自治体LINEの活用方法として非常に特徴的です。

歴史資料だからこそ、市外にも利用者がいる

下田は、幕末の開港と深い関係を持つ地域です。

そのため、市が編さん・刊行してきた資料を必要としているのは、下田市民だけとは限りません。

歴史研究者、郷土史に興味を持つ人、幕末史の愛好家、かつて下田に住んでいた人、旅行をきっかけに下田の歴史に興味を持った人など、市外にも潜在的な利用者が存在します。

現在、下田市教育委員会生涯学習課の公式案内では、出版物を市役所窓口で販売するとともに、郵送での購入にも対応しています。郵送の場合は生涯学習課への問い合わせが必要です。

例えば『図説 下田市史増補版』は、生涯学習課のほか、道の駅「開国下田みなと」でも販売されています。

ここにLINE電子申請という選択肢を加えることで、市役所から遠く離れた場所に住んでいる人でも、スマートフォンから購入手続きを始めることができます。

図説 下田市史増補版のLINEでの購入画面
オンラインショップのように、フォーム形式で購入者情報の入力、支払いを行い完了

一般的な行政電子申請が、

「住民が役所へ行かなくても手続きできるようにする」

ものだとすれば、下田市の刊行物購入は、

「市外の人にも行政が持つ地域資産へアクセスしてもらう」

ための電子申請ともいえます。

「行政のストック資産」を届けるためのデジタル化

こうした資料を電子申請によって購入しやすくすることは、

「役所の販売業務を効率化する」

だけではなく、

「行政が蓄積してきた地域の知識を、必要としている人へ届けやすくする」

取り組みとして見ることができます。

100円の「下田公園の植物マップ」も対象に

歴史資料だけではありません。

下田市教育委員会生涯学習課では、『下田公園の植物マップ』を100円で販売しています。

下田公園にはアジサイや椿だけでなく多くの植物が自生しています。

市によると、幕末にペリー艦隊が来航した際には植物学者も同乗しており、下田を含む日本各地で植物を採集しました。下田で採集されたとされる植物は草木106種、樹木69種、シダ植物16種で、そのうち23種が新種として発表されたとされています。

つまり、この植物マップ自体も単なる散策マップではなく、下田の自然と開港の歴史をつなぐ地域資料として見ることができます。

観光客や歴史ファンも「利用者」になる電子申請

ここで重要なのが、利用者を「市民だけ」と考えないことです。

行政の手続きの多くは、市内に住民票を持つ人が対象です。

しかし、

  • 市史
  • 歴史資料
  • 文化財調査報告書
  • 植物マップ

などは、市外の人も利用できます。

これらをLINEから申し込めるようにすることで、行政電子申請の対象者は、

「住民」から「その地域に関心を持つ人」

へと広がります。

行政サービスとの接点は必ずしも市役所の窓口から始まる必要はありません。

LINEという身近なチャネルを入り口にすることで、地域との新しい接点をつくることができるというのも、今回の事例から見える可能性です。

福祉サービスにもLINE。「ヘルプマーク」の申し込み

下田市のもう一つの特徴的な手続きが、ヘルプマークの申し込みです。

下田市公式LINEでは、「オンラインでの手続・申込」の一つとしてヘルプマークの申し込みを案内しています。

この手続きで重要なのは、申請する人自身が市役所へ行きやすいとは限らないということです。

だからこそ、窓口以外にスマートフォンから申し込める方法を用意することには意味があります。

電子申請を職員の業務効率化だけで考えるのではなく、

「行政サービスを必要としている人が、そのサービスにアクセスするまでの負担を減らす」

という視点で捉えることができます。

スマート公共ラボ 電子申請とは

「スマート公共ラボ 電子申請」は、自治体LINE公式アカウントを行政サービスの入り口として利用できる電子申請システムです。

スマート公共ラボは、LINE公式アカウントを活用し自治体業務のDXを実現できるサービス。広報のセグメント発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報など様々なお問合せをLINEで対応でき、また、コロナワクチン予約システムなどオンラインで各種申請、予約や、住民票のコピーなど決済まで完結できる電子申請など様々な自治体業務をデジタル化することができます。

住民や利用者は普段利用しているLINEから対象の手続きを選び、スマートフォン上で申請を進められます。

自治体ごと、手続きごとにフォームを設計できるため、証明書請求などの一般的な行政手続きだけでなく、今回の下田市のように、

「市史を購入する」
「植物マップを購入する」
「ヘルプマークを申し込む」

といった自治体独自の行政サービスにも活用できます。

職員側では申請内容を管理画面から確認でき、必要に応じて本人確認、添付ファイル、オンライン決済などの機能を組み合わせることもできます。

「何を電子申請にできるか」をシステム側から決めるのではなく、自治体が実際に行っている業務から考えられることが、活用を広げるポイントです。

LGWAN対応の管理画面

デモ環境の電子申請の管理画面:申請一覧画面。一覧から申請の対応状況が把握しやすいUIになっています。
デモ環境の電子申請の管理画面:個別の申請処理:申請内容の確認、処理状況の確認、個別連絡など個別の申請処理の状況が1画面で把握でき、1申請あたりにかかる処理速度が上がります。
フォーム編集画面:編集画面とプレビュー画面が同時に表示されるため、誤字脱字など確認がしやすい。

下田市ご担当者インタビュー

Q1. なぜ行政刊行物の購入をLINE電子申請の対象にしたのでしょうか?

市史編さん事業や芸術文化振興事業で取り扱う各種書籍は、市内にお住いの方だけでなく、市外からの購入希望者や歴史研究等の資料として利用する方も多く、電話やメールによる問い合わせが寄せられていました。

これまで、市役所等の窓口への来庁や、電話・メールでの個別対応が必要であり、購入者の負担となっていました。

また、支払方法が現金のみで、遠方からの購入や高額な書籍の購入における利便性の低さも課題となっていました。

そこで、下田市公式LINEを活用した購入手続きを検討し、まず総務課と庁内調整を行い、生涯学習課とプレイネクストラボ様で打合せを重ね、約1か月半という短期間でシステムを構築し、運用を開始しました。

LINE電子申請の導入により、時間や場所を問わず購入が可能となり、クレジットカードや電子決済による支払方法も選択できるようになりました。これにより、購入者の利便性向上と担当課の事務負担軽減を図ることができました。

Q2. 電子申請の導入による利用者からの反響はどうですか?

市役所に行かずに、スマートフォンから手続きできるので便利だという声をいただいております。24時間365日いつでもどこからでも申請手続きができる点が一番のメリットだと思います。

Q3. 電子申請の導入によって、職員の業務はどのように変わりましたか?

他市町村の方からの申請等は、従来郵送での手続きしかなく、手順の説明などで相当な時間を要していました。また、返信用封筒が入っていない等の申請上の不備のリスクが減り、申請から証明書発送までスムーズに進むようになりました。

市内にお住まいの方からの申請については、コンビニでの証明書交付をまず促し、その後LINE申請、郵送申請、窓口での申請等を適時案内しています。

市外の方からの申請については、基本的にLINEでの電子申請をまず推奨していますが、やり方がどうしてもわからない方や決済方法に対応できない方については、郵送で紙様式での申請をしていただいております。

Q4. ヘルプマークなど、福祉分野でLINE電子申請を利用する際に重視していることはありますか?

利用者が申請しやすい、分かりやすいと感じるような言葉選びや質問設定が大切だと思っております。

ヘルプマークの申込については、対象者を特定する個人情報の入力が不要です。

そのため、申請手段を充実させることで、必要とする人がよりヘルプマークを取得しやすい環境になったらと考え、LINE電子申請を利用しています。

Q5. 今後、電子申請化したい行政サービスはありますか?

市民の皆様の利便性向上や、窓口の混雑緩和、さらには行政手続きの効率化に資するサービスを中心に、広く検討していきたいと考えております。

おわりに

下田市の事例から見えてくるのは、電子申請の役割が「役所へ行かなくても申請できること」だけではないということです。

市史や文化財資料を必要としている人へ届ける。ヘルプマークを必要としている人が申し込みやすくする。

行政がすでに持っているサービスや地域資産と、それを必要としている人との間にある小さなハードルを、デジタルで一つずつ取り除いていく。

電子申請でできることはまだ数多く残されています。

自治体LINEを活用した電子申請や、自治体独自の行政サービスのオンライン化にご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
自治体ごとの課題や運用に合わせた活用方法をご提案いたします。