官民一体で「行政DX」に取り組む現場の声 〜官民共創の課題や可能性に迫る〜連載第1回目

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特別対談「元横須賀市長 吉田雄人氏×プレイネクストラボ株式会社CEO 柏 匠氏」

いよいよ官民一体で「行政改革」に挑む!

スマート公共ラボは、LINE公式アカウントを活用し自治体業務のDXを実現できるサービス。広報をセグメント化した情報発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報のお問合せや、コロナワクチン予約システムによる各種申請・予約などの自治体業務をデジタル化することができます。
プレイネクストラボ株式会社 CEO 柏匠氏(左)、元横須賀市長 吉田雄人氏(右)

転入者向け「メッセージ配信プラン」に込められた想いとは?


今、全国の自治体で急速に導入が進んでいる、GovTechプログラム。LINEを活用することで、自治体からの情報が住民に届きやすくなるだけでなく、新型コロナワクチン接種予約にも活用されるなど、官民一体となった行政DXの取り組みが話題になっています。そこで今回は、これまでにさまざまな自治体でGovTechプログラムを導入してきたプレイネクストラボ株式会社のCEO  柏 匠氏と、同社のアドバイザーに就任された元横須賀市長 吉田雄人氏が緊急対談を実施。自治体の最前線で垣間見てきたリアルな行政の実態と、行政DXの展望、そして今回リリースされる「メッセージ配信プラン」に込められた思いを伺いました。


市民の満足度向上を
イノベーションで働きかけていく


スマート公共ラボは、LINE公式アカウントを活用し自治体業務のDXを実現できるサービス。広報をセグメント化した情報発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報のお問合せや、コロナワクチン予約システムによる各種申請・予約などの自治体業務をデジタル化することができます。

柏:吉田さんは横須賀市長時代に、いろいろなことに挑戦されてきましたよね。たとえば予算編成の過程の公表といった取り組みもあれば、ヨコスカバレー構想のような情報通信企業支援策など、ものすごく幅広いです。

吉田:とてもよく見てくださっていて、ありがとうございます。

柏:当時、さまざまな新しいことに挑戦されたと思うのですが、どういった狙いや思いがあって、取り組まれていたのでしょうか?

吉田:そうですね、大きなポイントは3つぐらいありまして。まず1つ目は、当然なんですけど、やっぱり市民満足度の向上。地方自治法では「住民福祉の増進」って書いてあるんですけども、横須賀の市民がどうすれば幸せになれるのか。それをやっぱり一番に考えるっていうのが、すごく大事なポイントです。大手資本の企業と連携協定を結んだとか、そういったことがよくリリースで流れたりすることがあります。しかし、それが本当に市民の幸せ向上に繋がっているのかどうかっていうのが、大事な観点です。私としてはやっぱり軸足は、まず市民の幸せ向上に置くことが、とても大事だと思っていました。

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 2つ目としては、ちょっと観点が変わるんですが、「イノベーションを起こさなきゃいけない」という思いがありまして。市役所とかの行政組織って、課題解決を専門とする集団であるべきだと思っていますし、これまでの歴史の中でもたくさんの課題を行政組織は解決してきたと思っているんです。それなのに、もう課題が山のように溢れていて(苦笑)。なぜかと言ったら、これまでの行政のあり方では解決できない課題が増えてしまっているからだと。

 人口が伸びていた時代と、今のように減っていく時代とでは、明らかに行政の抱えている課題が変わってきています。たとえば人口が増えている時代は住宅供給が追いつかなくて、市営住宅や県営住宅をたくさん作ってきました。けれども人口が減ってくると、空き家問題が世の中に出てきます。では、行政がその解決策を持っているかというと、そうではありません。だから、民間のリノベーションスキルを持った工務店さんとか、不動産のマッチングプラットフォームとか、そういうところに頼らざるを得なくなっているわけです。ですので、小さくてもいいからイノベーションを起こさないと、目の前にある課題解決というのは進まないという確信を抱くようになりました。だから、イノベーションをいかにして起こすかということを大事にしてきましたね。

柏:なるほど。


小さな声にこそ
やさしく寄り添いたい


吉田:3つ目は、市民満足度の向上とか幸せの増進とかそういう話の延長線ですが、なかなか市役所に声が届けにくい人たちってたくさんいると思うんですよね。特に、一票を持っていない方たち。子どもとか、障害のある方とか、寝たきりの高齢者とか、外国人とか。ほかには自然環境やペットなど、人だけでなく周囲の環境なども含めて、実は課題がしわ寄せされているところが多いんです。特に児童虐待なんていうのは、象徴的なものだと思っています。彼らは声を上げられない、親も味方してくれない、もちろん業界団体もない、それがゆえに、なかなか解決の道筋が立たない。そういうところにもちゃんと光を当てていくっていうことも、意識してやっていました。

柏:すばらしいですね。当時、お若いときから政治家をされてきて、いろんな熱い思いを持って挑戦されていたと思うんですけども、逆に、やっぱり思いが先走ってしまって、現場を動かすことが難しいと感じられたこともありましたか?

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吉田:市長になったときに、やはり人事は難しいと感じました。当時33歳で就任したときに、課長や部長は皆さん、私よりも10歳以上も年上で…(笑)。当然身近な地域ですから、高校の先輩とかも部長や課長にいたりとかして。このやりにくさは、最初にすごく感じていました(苦笑)。

柏:なるほど、最初は戸惑ってしまいそうですね。

吉田:でも、人事ってすごくシビアなところもあって。人事権を持っている人間が、きちんとマネジメントすることによって動き始めるものだなっていうのは、少し経ったらわかってきましたが、最初はやはり大変でしたね。

 あと、これは個人的な話ですが、組織全体としては、本当にリソースがなくなってきていると。行政を運営する際に必要な、まずお金がほとんどない。もう借金を返すので精一杯みたいな状況です。いわゆるプライマリーバランス、借りるよりも多く返す、みたいな方法をやっていても、いつになったらこの借金がなくなるのか、誰一人知らないような状況だったり。

 あともうひとつは、やっぱり職員ですね。先ほどノウハウの話をしましたけど、職員の人数もどんどん減っていってます。これは「職員が多すぎるぞ」とか「働いてないのに」などという一般世論に押されて、ITの力を借りてどんどん人を減らしてきたんですね。それで、何か新しいことやろうと思ってもお金がない、人もいない、ノウハウもないみたいな。そういう三重苦のような状況下で多くの課題に取り組まなきゃいけなかったのは、ちょっと大変でしたね。


ITを活用して
市民の健康を支える


柏:リソースなどのやりくりに苦労されてきて、予算もない、人もいないみたいな状況だった中で、当時から行政DXみたいなのものを取り入れようとされていたと思うのですが。導入しようとされていた中で、課題とかはございましたか?

吉田:当時はまだデジタルトランスフォーメーションとか、そういう言葉はありませんでした。私が市長になった2009年頃は、2000年に向けてeジャパン構想とかですごく盛り上がっていたような時期と比べると、IT部門が企画部門から運用部門・保守部門に、ちょっと言葉を悪く言うと格下げみたいな状況にあって。ITを使って新しい業務の効率化を図ろうとか、市民サービスを向上しようとかっていうマインドよりも、どう安く安定的に運用していくかみたいな、そういうフェーズに入ってたところがあって。政府のほうを見ても、住民基本台帳カードだとか、マイナンバーだとか言いながらも、まったく住民サービスに繋がらないような状況があって。

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 そうした状況でも、私自身がアクセンチュア出身ということもあり、ITの力を肌身で感じるところがたくさんありました。ITを活用することによって、さっき申し上げた「お金が足りない」とか「人がいない」という役所的な課題を解決できるんじゃないかなと思っていました。

 特に軸足を置かなければいけないのは、市民の満足度をどう上げるかっていうところだと思うんです。たとえばDXっていう言葉は無かったものの、データを活用した政策作りとか、サービス作りとかっていうのは意識しました。市民の生活習慣病とか、そういったものを予防するために、今までは限られた保健師さんが、それこそ手当たり次第に勘や経験に基づいて、食事や運動の指導をしたりしていたわけですが。ミナケアというベンチャー企業と連携をして、処方箋データや健康診断データなどをビッグデータとして解析してもらい、どういう人たちがいわゆる生活習慣病のハイリスク者なのかっていうのを抽出してもらいました。当然個人情報を渡さずに出して、データのみを抽出したものを返してもらって、こちらで突合することで、保健師さんがハイリスク者に的確にアウトリーチできるようになり、保健指導に入れると。そういった取り組みもやりました。

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2014年7月15日付・神奈川新聞記事より

 生活習慣の先には糖尿病があって、その先に人工透析が待っていて、医療費は1人年間500万ぐらいかかります。でも、それを未然に防ぐことによってトータルコストを削減できるし、職員も保健師さんが100人、300人いるわけではないので、限られた保健師さんという貴重な人材を、必要な市民のところに届けることが可能になります。当時はDXという言葉は無かったにせよ、市民に軸足を置きながら、ITの力をうまく使えたひとつの事例なんじゃないかなと思っています。

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柏:継続的にそういった取り組みは、まだ続けられているんですか?

吉田:データヘルス計画っていう考え方がその後出てきて、そこに収斂される形できちんとデータを使いながら、いわゆるエビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、EBPMに基づいて役所で計画を作っています。方法論などは、その後もちゃんと受け継がれてやっていってると思います。

柏:未来へ繋ぐ流れができていて、すばらしいですね。先ほどのお話にあった、開発から保守へどんどん追いやられていくっていうのは、ちょっともったいないなと思いました。しっかりと未来への流れを作っていくためには、EBPMに基づいた行政DXというアプローチは有効そうです。


誰もがアクセスできる
オープンリソースが重要


吉田:ただ注意したいのは、「やっぱりデジタルだ」っていうことで菅政権から大きく舵が切られたことはとてもいいトレンドだなと思いながらも、同じことの繰り返しになってはいけないなと。結果フタを開けてみたら、いわゆるITゼネコンみたいな人が仕様書をほかにはまったく見せずに、当事者以外は誰も触ることができないシステムを作って、スタックさせてしまう、みたいなことが起きてはいけない。

 基本的には、たとえば課題解決をしたいと思った際に、誰もがシステムにアクセスでき、みんなで解決できるようになっていないといけないと思います。そのためには、まず考え方から変わっていかないと。役所としてはあごで使える保守ベンダーがいてくれると超楽ですけど(笑)、そこからは何も生まれてこないので。新しい課題に即座に対応できるオープンソースみたいな考え方で進めていくべきですよね。

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柏:そうですね、日本独特なところだと思うんですけど、カスタマイズが大好きなんですよね。アメリカのITサービスなんかですと「この通り使ってくださいね、カスタマイズしませんよ」っていうことが結構多いんですけども。日本は「いやいや、ここちょっと使いづらいんだよね」みたいな意見があると……。

吉田:「あ、はい、わかりました! やっときます!」みたいなね。

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柏:そうですね(笑)、なかなか難しい問題ではあります。ところで、吉田さんは横須賀市長としてさまざまなご経験をされてきて、任期満了で退任されてから今度は民間のほうで、いろんな仲間を巻き込んで新しいことをされているように見受けられます。今後の新たな活動は、どういったことに軸足を置いて、どういったことをされていこうと考えてらっしゃいますか?


「GR」を軸足にし
きめ細やかな解決をする


吉田:お聞き及びかと思いますけど「GR」を仕事の軸にしていきたいと思っています。政治は離れても、地域課題からは離れたくないという思いが強くありまして。もちろん政治にしか変えられない領域はありますが、政治でしか変えられないわけではなくて、政治行政と民間がきちんと連携することで解決できる課題ってたくさんあるなと、市長の経験を踏まえて思うようになりました。

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当然、市長職としてできることはいろいろあるのですが、たとえば横須賀市っていう意味で言うと、人口規模が40万弱なわけですよ。そうすると、5000人、8000人の町が抱えている課題とは内容が異なってきます。また、国の省庁と民間がうまく一緒にやれないという課題にも、市長という立場ではなかなか働きかけができなかったので。今後は広い意味で、地域の課題を解決できるように、行政と民間をきちんと連携できる繋ぎ役でありたいなと思っています。

 ちなみにGRっていうのは「ガバメントリレーションズ」の略ですが、まさに行政府とリレーションを構築しながら課題を解決していくという方法論で、それを駆使した仕事をしていきたいですね。

柏:ちなみにガバメントリレーションズって、海外では活発ですか?

吉田:海外ではロビイングの企業がGRという言葉を使っていますけれど、ものすごく活発ですよね。たとえばワシントンDCの目抜き通りは、そういったGR企業が一等地のほとんどを占めています。当然ロビイストであったり、シンクタンクであったり、日本的に言えばそういう部類に入る企業もたくさんあります。政府への働きかけなどを得意にしている企業がたくさん存在しますね。

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ワシントンDCの目抜き通り

 最近はパブリック・アフェアーズという言葉も生まれています。行政府だけでなく一般世論にも、PRの手法を使って訴えかけることで政策の実現を図るといった取り組みなども出てきているので。

 しかし、なぜか日本ではそういったことがあまり流行らない。というのも、一部の業界団体が強すぎて、そうしたところが政治と結託しすぎているのです。そのため、お客さんにとって利点のあるようなベンチャー企業などが入り込む余地がなく、なかなかGR的な企業が育ってこなかったっていうのが、これまでの現状だったのではないかと思います。


転入者に情報が的確に届く
「メッセージ配信プラン」とは?


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メッセージ配信プラン

柏:まさに今ベンチャー企業として、プレイネクストラボは吉田さんのお力を借りていろんなことに取り組んでいきたいなと思っているところです。まず、今回一緒にリリースさせていただく「メッセージ配信プラン」ですが、吉田さんからいろいろアイディアをいただきながら、一緒に作ってきました。こちらのプランに込められた狙いや思いを教えてください。

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吉田:市長任期の後半に、LINEがようやく流行り出して、これすごいねと感じていた頃でした。でも就任当初は、やっぱりまだメールベースでしたし、TwitterやFacebook、メッセンジャーもまだ誕生して間もない頃でした。やがて市長退任時には、LINEは人口の8000万人もの方が使っているコミュニケーションツールに成長していました。「これはやっぱり使わない手はないだろうな」と、強く感じたわけです。

 また、市長のときに、市民にいかにして情報を伝えるか、あるいは市民の声をどうやって聞いていくか、それがすごく難しかったっていうのが正直なところなんですね。行政側としてはいろいろ良いことをやっているのに、市民側からは「市役所は何をやっているのかよくわかんない」「何もやってくれない」といった声が届くことが多くありました。広報誌のアンケートをとると8割5分ぐらいが「広報誌を読んでいる」という回答なんですが、同じアンケートでその広報紙に書いてあった内容について質問すると「その事業は知らない」とかにチェックされているんですよ。要は見ているけど、読んでいない。伝えているけど、伝わってない。

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市民から道路損傷などを通報できる「損傷報告」の利用画面

 そんな中でプレイネクストラボさんが、行政と組んでサービス提供している、LINEの「GovTechプログラム」は、とても可能性がある。市民への情報発信も的確に伝わりますし、市民からのリアクションも迅速に受け取ることができる。本当に可能性のあるサービスだなというふうに思っています。

柏:ありがとうございます。


新聞を読まない若年層にも
LINEで情報配信できる


吉田:その上で「メッセージ配信プラン」についてお答えすると、特に行政からの情報が届かないのは「新しい人たち」なんですね。要は、転入者です。新しく自治体に引っ越してきた人たちって、町内会や自治会に入りたがらないですし、入らないことが多い。最近は共働きが多いですから、平日は家を空けていることの多いご家庭では「別に町内会に入っても意味ないよね」と。これは年齢が若くなればなるほど顕著です。

 地域によっては、自治体の広報紙を町内会に配っていただいているケースがあります。また、新聞の折込みで配ったりもするのですが、実際に若い人たちは紙の新聞を読まなくなっていますよね。紙を配達してもらわなくても、ネットで読めちゃうので。購読者数が毎年発表されていますが、100万の単位で新聞を読む人が減り続けている状況です。ですので、新聞を読まないし、新聞折込みでも届かない。そういう人たちに対して町の情報をどうやって伝えていけばいいのかっていうのは、横須賀のみならず多くの自治体の課題なわけです。

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公益財団法人 新聞通信調査会「第 13 回メディアに関する全国世論調査(2020年) 」P30 新聞購読者数の推移グラフ

 そこで、たとえば「個別に対応すればいいじゃん」っていう考え方があるのですが、たとえば横須賀市の人口は約40万人で、転入者は約1万5000人くらいいるわけです。人口が伸びている相模原市では人口約70万人で、転入者が3万人弱です。だから、個別対応できる数じゃないんですね。そういう皆さんにどのように情報を届けていくかっていうのが課題になる中で、若くてスマホネイティブな世代であれば、LINEは必ずと言っていいほどインストールされていて、日常のコミュニケーションに使われています。

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 そこで、LINEを活用した「GovTechプログラム」を使えば、新しく入ってきた人たちに的確に行政の情報を届けていけるんじゃないかと。特に転入者には、町のある程度のルールをわかっておいてもらいたいわけですよ。ゴミ出しのルールや、災害時の集合場所とか。たとえば子育て中の人であれば「小児医療費が何歳まで無料ですよ」とか「給食のお金って、このぐらいですよ」とか「給食のメニューはこんなふうに気を遣っていますよ」とか、そういう情報をぜひとも届けたいわけです。

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自治体のLINE公式アカウント

 さらには、その市内の見所とか、遊べる場所とか。子育て世代だったら、雨が降っても子どもと遊べるところって、こういうところがあるんですよ、とか。たとえば友達に「引っ越したから遊びに来てよ」っていうときに、連れて行ける場所がどこにあるかとか、そういうことも本当に知っておいてもらいたい。

 でも、広報紙も届かない。新聞の折り込みでやっても無理。そういう場合でも、LINEを使って届けていけば、行政として一番情報が届けづらいターゲットにも、きちんとした情報を届けていくことができる。そういう意味では、本当にとてもすばらしいサービスだなと思います。…なんか、力説しちゃった(笑)。

柏:ありがとうございます(笑)。我々のソリューションをお伝えするときによく言われるのが、「導入したら職員の仕事が増えちゃうんじゃない?」という不安です。ご担当の方がすごくやる気になってくださって「これは絶対効率が上がる、非常に使いやすい」と思っていただいても、他の部門の方が「作業が二重化するんじゃないか」みたいな懸念が出てくることがあります。そこで当社から説明会を何度か開催させていただき「二重化すること無く、コミュニケーションの質と効率が向上するので、結果職員の方々の負担は減ります」ということを自治体さんの実例をベースにご説明させていただくことが多々あるんですけども。そういった方々に対して、何か伝えるべきメッセージはありますか?


デジタル化でシンプルに!
二度手間のない効率作業


吉田:プレイネクストラボさんのサービスでは、二度手間にならないよう工夫されてらっしゃると思うのですが、やっぱり大事なのはマインドのほうだと思います。そのマインドにも2種類の考え方があるんです。まず「本当にデジタルに全部シフトしてもいいんだ」っていうマインドを、職員の方にまず持っておいてもらうっていうのがとても大事だと思います。

 あともうひとつは、発信という意味では先ほども少し触れましたけど、伝えたかどうかではなくて「伝わったかどうか」っていうマインドを持たなければいけないということです。でも、それってそんなにハードルは大きくないんですよね。行政の職員は真面目なので、ゴールのイメージを「伝えた」ことに置いているから、そういうふうに思っちゃうだけで。「伝わったかどうかをゴールにしなさい」っていうふうにきちんと現場で徹底されていけば、おそらくそのマインドで皆さん仕事をし始めるので、大丈夫だと思います。

柏:そうですね、デジタル化っていう意味では、LINEはまったく難しくないので、職員の方にも「オールデジタル化の第一歩」ぐらいな感じで、軽く捉えていただけるといいなと我々は思っております。


手元で手続きが完了する
持ち運べる行政


吉田:そういう意味ではもう、LINEで市役所のサービスって結構できますよね? 今までのような、市民の方が市役所に行って職員の方に対応してもらう手続きなどは、デジタルでほとんどできちゃいます。一方、裏側のシステムも実はデジタル化すべきポイントかなと思っていまして。ここができれば、本当にまさに、100%オールデジタルに限りなく近づけるはずです。

 実は市役所も少しずつそういう流れはあるなと思っています。窓口に立っている職員っていらっしゃいますが、そこに来られる市民の方は「市役所の職員だ」と思っているじゃないですか。でも、いくつかの自治体では、市役所の窓口業務を外部委託しているんです。だから民間の人が立っていたりすることがあるんですね。これってとても新しくて、良い動きだなと思っていて。決して市役所の仕事って公務員じゃなければ全部できないわけじゃなくて、外部に委託できる部分ってほかにもたくさんあるんだと。

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 その先には、デジタルに置き換えてもいい部分って、もっともっとたくさんあるんじゃないかというふうな考え方に進んでいけると思うんです。私なんかは「窓口業務はLINEで全部できるんじゃないかな」、と思っているくらいです。窓口業務を減らして、本当に困っている人に職員が向き合える時間を増やしたいんです。不登校の子どもとか、どうしても虐待で手を上げてしまうお母さんとか、そうした方々にちゃんと職員が寄り添えるようにする必要があるんだ、と。

 でも現状では、児童扶養手当の請求なども、わざわざ市役所に来て何度も何度も住所と名前を書かされて。それで申請書をようやく出せる、みたいなものよりも、LINEにはある程度属性情報も入っていると思うので、それを使うだけで簡単に申請できる、っていうのがいいと思うんですよね。あと本当は、LINEPayで入金できるようになれば、なおいいんでしょうけど。そういうふうになってくれば、本当に窓口業務が一掃されるんじゃないかなと思います。

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LINE Pay利用シーン例

柏:そうですね。いろいろ法改正とか、課題もあると思いますが、日本の今まで遅れている部分でキャッチアップするには、そういうところも本当は取り組んでいきたいですね。

吉田:確かに法律の運用は「紙を前提にした様式」って決められているケースが多いですからね。「これは紙じゃなくてもいいよ」っていう一言が入ってくるといいですよね。

柏:ちょっと脱線しますけど、日本は税務においても、まさにそういう問題があると思います。経済の活性化っていう視点からも、デジタル化がもっと進むべきですよね。

吉田:税務なんかは、裏側はもう全部OCRで読み込んで、システム化されていると思うんですよ。だから実は、間に入っている税理士さんがちょっとマインドを変えるだけで、デジタル化が一気に進んでいく感じもしますね。

柏:e-TAXとかは、便利になってきていますよね。

吉田:それは進んできていますよね、本当に。


全世代が活用できる
オールデジタル化の実現へ


柏:最後の質問になりますが、今後予定されている展開など、イメージされていることを教えていただけますか?

吉田:LINEで本当になんでもできる時代というものを、ぜひプレイネクストラボさんと一緒に作っていきたいなっていう思いが強くあります。すでに事業としても取り組んでいらっしゃいますが、新型コロナワクチン接種の予約でも、LINEでできる人と役所に電話する人と、今回かなり差がついてしまったと思うんですよね。実は私の母も「役所に電話しても繋がらない」ってブーブーブーブー言っていて。

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 私が「LINEでできるんじゃないの?」って確認してみたのですが、まさにプレイネクストラボさんが納入している自治体でした。実際にLINEで手続きしてみたら、もうサクサクっと予約が取れちゃうんですね。それで近所の同じ世代の方々を母が集めてきて、私がLINEで申請するお手伝いをさせていただきました(笑)。

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新型コロナワクチン接種の予約画面

 これはすごく象徴的で、私の母親はもう75歳を過ぎてますけど、やっぱりスマホを使っているわけですよね。孫とのメッセージのやりとりも含めて、LINEを使っています。ということは、いわゆるデジタルデバイドみたいなことは意識せずに、行政サービスをデジタルにシフトしていくことが本当にできる時代になっているということです。

 ぜひ、そういうサービスのインフラとなるようなサービスを、プレイネクストラボさんと作っていきたいですね。その一歩目が、今回の転入者向け「メッセージ配信プラン」だと思っています。日頃からいろんな自治体に事業展開されているサービスも含めて、新たなインフラになっていくんじゃないかなと期待しています。

柏:ありがとうございます。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

吉田:がんばりましょう。こちらこそ、よろしくお願いいたします。

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元横須賀市長の吉田雄人氏が、現場で肌身で感じてきたのが、情報発信の重要性でした。市民がより快適に暮らすことができ、もっと幸せになってほしい。そんな想いが込められた「メッセージ配信プラン」が、いよいよリリースされます。転入者にとって重要な「補助金の情報」「ゴミ出し情報」「災害時の情報」などが、LINEによって的確に届けられるサービスです。月額3.75万円で導入可能な「メッセージ配信プラン」について、どのような疑問でもお答えいたしますので、お気軽に当社までお問い合わせください。今後もプレイネクストラボは吉田氏とタッグを組み、行政DXの推進に取り組んでまいります。

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