【導入事例レポート】導入から3年、対象手続きを拡大。大川市で定着するLINE電子申請

福岡県大川市では、2023年からLINEを活用した電子申請に取り組んでいます。

スタート時には給付金申請で高い利用率を記録しましたが、大川市の特徴は、その成果を一時的なものにせず、その後も利用できる行政手続きを広げてきたことです。

給付金から各種証明書の申請へ。導入から約3年が経過した現在も、LINEは住民が行政手続きを行うためのデジタル窓口として活用されています。

今回は、大川市がどのようにLINE電子申請を導入し、継続的な行政サービスへと広げてきたのかをご紹介します。

「行かない・書かない市役所」を目指した電子申請

大川市では、住民の利便性向上や行政業務の効率化に向けてDXを進めてきました。

その中で目指してきたのが、市役所に出向かなくても手続きできる「行かない市役所」と、申請書を書く負担を減らす「書かない市役所」です。

従来、各種証明書を取得するには窓口や郵送による申請が必要でした。窓口では混雑時に待ち時間が発生し、郵送では申請から証明書が届くまでに時間がかかります。申請内容に不備があった場合には、職員からの連絡や書類の再提出も必要になります。

こうした負担を減らし、より身近な方法で行政手続きを利用できるようにするため、大川市ではLINE公式アカウントを入口とする電子申請を導入しました。

大川市LINE公式アカウントの電子申請メニュー画面
申請内容の入力フォーム

給付金申請からスタート。利用実績を次の手続きへ

大川市で「スマート公共ラボ 電子申請」の利用が始まったのは2023年1月です。

まず「大学生等応援臨時給付金申請」からスタートし、翌月には「出産・子育て応援給付金」の申請にも対応しました。

LINE公式アカウントから申請を開始し、マイナンバーカードを利用した公的個人認証や、必要に応じたオンライン決済までスマートフォン上で進められる仕組みです。

出産・子育て応援給付金では、利用開始後の早い段階からLINE申請が多く利用され、約250件、全体の96%以上がLINE経由となりました。

その後、大川市では電子申請の対象を、住民票や戸籍関係、税証明など、日常生活で利用する行政手続きへと広げていきました。

対象手続きは段階的に拡大し、2024年9月時点では13種類の行政手続きに対応するまでに広がっていました。

給付金のような期間限定の手続きから、日常的に利用する証明書申請へと対象を広げてきたことが、大川市の電子申請の特徴です。

大川市の電子申請に対応した手続きのタイムライン(2023年1月〜2024年9月)

住民にとって身近なLINEを「行政手続きの入口」に

電子申請を利用する際、住民は大川市LINE公式アカウントから対象となる手続きを選択します。

申請内容の入力から、マイナンバーカードを使った本人確認、必要な手続きでは決済までオンラインで進めることができます。

申請内容は職員側の管理画面で確認でき、対応状況もオンラインで管理できます。

住民にとって身近なLINEを行政手続きの入口とすることで、利用しやすい環境を整えています。

また、導入当初の利用者からは、必要書類をコピーせずスマートフォンで撮影して提出できることや、小さな子どもを連れて市役所へ出向かずに申請できることを評価する声も寄せられていました。

手続きを全てをLINEで完結できる迷わないUX

電子化は、職員側の業務にも変化をもたらす

LINE電子申請は、住民の利便性だけでなく、職員側の申請処理にも変化をもたらしています。

例えば、申請内容に修正が必要な場合、電話がつながらない申請者に対してもLINEで返信や修正依頼を送れるようになりました。

また、従来1件あたり約10分かかっていた申請内容の確認作業が、導入後は約5分となり、確認時間を50%削減できたとされています。

住民側の申請だけをオンライン化するのではなく、その後の確認や連絡まで含めてデジタル化することで、職員側の業務効率化にもつながっています。

スマート公共ラボ活用事例セミナー第14回レポート。スライド17。スマート公共ラボは、LINE公式アカウントを活用し自治体業務のDXを実現できるサービス。広報のセグメント発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報など様々なお問合せをLINEで対応でき、また、コロナワクチン予約システムなどオンラインで各種申請、予約や、住民票のコピーなど決済まで完結できる電子申請など様々な自治体業務をデジタル化することができます。

導入から3年。電子申請を継続的な行政サービスへ

大川市の電子申請で注目したいのは、導入当初の利用率だけではありません。

2023年の開始から約3年にわたり運用され、その間に給付金から各種証明書へと利用できる手続きが広がってきました。

導入時に利用された仕組みをそのまま終わらせるのではなく、実際の運用を続けながら対象となる手続きを増やしてきたことで、LINE電子申請は住民が行政サービスを利用するための選択肢の一つになっています。

大川市の取り組みは、電子申請を「導入する」だけではなく、継続して運用し、利用できる手続きを広げていくことの重要性を示す事例といえます。

大川市ご担当者様インタビュー

導入から約3年が経過した現在の運用状況や、これまでの振り返り、今後の展開について、大川市ご担当者様にお聞きします。

Q1. 電子申請の導入から約3年が経過しました。これまで運用を続けてきて、あらためて感じている成果や変化について教えてください。

導入当初は住民の皆さまに利用していただけるか不安もありましたが、給付金申請をきっかけに多くの方に利用いただき、その後も継続的に利用が広がっていることを実感しています。

特に大きな変化は、「行政手続きは市役所に行って行うもの」から「スマートフォンから手続きできるもの」へと、認識が少しずつ変わってきたことです。職員にとっても電子申請が日常業務の一部として定着し、住民サービスの向上と業務効率化の両面で効果を感じています。

Q2. 導入当初は給付金申請からスタートし、その後、証明書などへ対象手続きが広がっています。対象を拡大してきた背景や、手続きを選ぶ際に重視していることを教えてください。

給付金申請で一定の利用実績や手応えを得られたため、その仕組みを一時的なものにせず、日常的に利用頻度の高い手続きにも活用したいと考えました。

対象手続きを選ぶ際には、市民の利便性向上を最も重視しています。住民票や戸籍関係の証明書、税証明など、窓口への来庁が必要になる機会の多い手続きから順次拡大してきました。市民の皆さまが「いつでもどこでも手続きできる」環境づくりを意識して進めています。

Q3. 3年間運用する中で、住民の利用状況や反応に変化はありましたか。また、LINE電子申請が住民に定着してきたと感じる場面があれば教えてください。

導入当初は給付金申請など特定の手続きが中心でしたが、現在では住民票の写しや各種証明書の申請、子育て関連手続きなど、日常的な行政サービスにも利用が広がっています。市民の皆さまからは「窓口に行かずに申請できて便利」「操作が分かりやすい」といった声をいただいています。

また、以前は「市役所でしかできない」と考えられていた手続きについても、窓口や電話でお問い合わせを受ける際に、「LINEから申請できますか」と確認されることも増えてきました。LINEが単なる情報発信ツールではなく、身近な行政手続きの窓口として認識され始めていると感じます。

さらに、本市ではLINE電子申請を起点として公共施設予約機能も導入しました。市民がLINEを通じて行政サービスを利用する機会が増え、LINEを入口としたデジタル窓口が定着しつつあることを実感しています。

Q4. 職員の皆様にとって、導入当初と現在とで、申請受付や確認業務にどのような変化がありましたか。また、長期間運用してきたからこそ分かった課題や改善点があれば教えてください。

電子申請の導入により、窓口対応や郵送対応の負担が軽減されました。申請内容の確認や住民への連絡もオンラインで行えるようになり、業務の効率化を実感しています。

一方で、利用しやすい環境を維持するためには、申請フォームの見直しや案内方法の改善など、継続的な運用が重要だと感じています。デジタルに不慣れな方への配慮も必要であり、窓口や電話でのサポートとのバランスを取りながら運用していくことが今後の課題だと考えています。

Q5. 今後、電子申請についてどのような手続きへの拡大や活用を考えていますか。「行かない・書かない市役所」の実現に向けた今後の展望もあわせて教えてください。

今後も住民ニーズの高い手続きを中心に、LINE電子申請の対象拡大を進めていきたいと考えています。これまでもLINE電子申請を入口として、各種証明書の申請や公共施設予約など、市民の皆さまが利用しやすいデジタルサービスの充実に取り組んできました。

また、本市ではフロントヤード改革やAI活用についても検討を進めています。スマートフォンに慣れた方はオンラインで手続きを完結できるようにする一方、デジタルに不慣れな方には対面や遠隔支援も組み合わせ、誰一人取り残さない行政サービスの実現を目指しています。

「行かない市役所」「書かない市役所」は、単に窓口をデジタル化することが目的ではありません。市民一人ひとりが自分に合った方法で、必要な行政サービスをより便利に利用できる環境をつくることが本当の目的だと考えています。

今後もデジタル技術を活用しながら、市民の利便性向上と職員の業務効率化を両立し、『市役所に合わせてもらう行政』から『市民の暮らしに合わせる行政』への転換を進めていきたいと考えています。