【長野県 伊那市】地域創造課がリードするDX改革を取材!LINEを活用したマーケティングとブランディング戦略とは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スマート公共ラボ活用事例。長野県伊那市の事例。スマート公共ラボは、LINE公式アカウントを活用し自治体業務のDXを実現できるサービス。広報のセグメント発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報など様々なお問合せをLINEで対応でき、また、コロナワクチン予約システムなどオンラインで各種申請、予約や、住民票のコピーなど決済まで完結できる電子申請など様々な自治体業務をデジタル化することができます。
長野県伊那市役所 地域創造課 諸田和幸氏、同・志知貴文氏


豊富なデータ活用で
地域ブランドを革新


全国の自治体がより効果的な情報発信と市民サービス向上のために、LINEを活用する動きが広がっています。長野県伊那市では、2023年12月よりLINE公式アカウントをリニューアルし、スマート公共ラボ for GovTechプログラムを導入しました。従来の一律的な情報発信から脱却し、セグメント配信機能などを利用して配信の精度を向上させることが可能になり、職員の業務効率も大幅に改善しました。さらに、伊那市の取り組みは、デジタル化を推進する情報政策推進課ではなく、マーケティングとブランディングを推進する地域創造課が主導していることも特徴です。この画期的な試みの舞台裏と、それが市民の生活や市の運営にもたらした実質的な変化を、取材によって深堀りいたします。

スマート公共ラボ活用事例。長野県伊那市の事例。LINE画面1。スマート公共ラボは、LINE公式アカウントを活用し自治体業務のDXを実現できるサービス。広報のセグメント発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報など様々なお問合せをLINEで対応でき、また、コロナワクチン予約システムなどオンラインで各種申請、予約や、住民票のコピーなど決済まで完結できる電子申請など様々な自治体業務をデジタル化することができます。
スマート公共ラボ活用事例。長野県伊那市の事例。LINE画面2。スマート公共ラボは、LINE公式アカウントを活用し自治体業務のDXを実現できるサービス。広報のセグメント発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報など様々なお問合せをLINEで対応でき、また、コロナワクチン予約システムなどオンラインで各種申請、予約や、住民票のコピーなど決済まで完結できる電子申請など様々な自治体業務をデジタル化することができます。
スマート公共ラボ活用事例。長野県伊那市の事例。LINE画面3。スマート公共ラボは、LINE公式アカウントを活用し自治体業務のDXを実現できるサービス。広報のセグメント発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報など様々なお問合せをLINEで対応でき、また、コロナワクチン予約システムなどオンラインで各種申請、予約や、住民票のコピーなど決済まで完結できる電子申請など様々な自治体業務をデジタル化することができます。

伊那市LINE公式アカウントのリッチメニュー


「地域創造課」主導の
LINEを活用した革新的戦略


―まず、所属されている部署と業務について教えてください。

諸田さん:伊那市役所で地域創造課に所属しています。集落支援員という形なのですが、デジタルローカルデザインという領域で、オープンデータの利用や、データ作成・活用、リサーチに関する業務に携わっています。

志知さん:私も地域創造課の地域ブランド推進係に所属しています。地域ブランド推進コーディネーター という役職名で、様々なプロジェクトに携わっています。地域創造課は関係人口、交流人口作り、移住定住促進、地域ブランディングにまつわる業務のプロジェクトを進める推進役です。ワーケーションや働き方改革、デジタルツールの活用など、多岐にわたる取り組みを実施しています。


―伊那市の特徴について、お聞かせいただけますか?

諸田さん:伊那市は南アルプスと中央アルプスに抱かれた、長野県の南部に位置しており、その最大の魅力は自然の雄大さにあります。四季折々の風景が楽しめることも特徴で、春には桜が美しく咲き誇る高遠城址公園が有名であるなど、エリアごとにさまざまな魅力がございます。移住者も含め、地域住民が豊かな自然環境の中で生活を営んでいることが、大きな魅力だと思っております。


LINEを通じた
マーケティングツールの有効活用


―では、スマート公共ラボ for GovTechプログラムの導入前に、伊那市で抱えていた課題を教えてください

志知さん:マーケティングやデータ活用を通じて効果的な行政経営を目指すことが、伊那市の庁内における課題だと考えています。私たちの地域では、データに基づかない行政サービスや行政-数などにおいて無駄なコストを避ける必要があります。そのため、効率的かつ効果的なサービス提供が求められており、データなどの裏付けがある中で、施策をしていく必要があります。

伊那市のデジタル化の事例としては、AIを活用した自動配車の乗り合いタクシーやドローンを用いた物流、遠隔医療などがありますが、これらの取り組みから得られるデータの収集と活用がまだ十分ではありません。行政のDX化において、データ化されていない情報が多く存在しており、これが大きな課題となっています。この状況を踏まえ、私たちはLINEを単なるDXツールではなく、マーケティングツールとして捉えておりまして、これまで収集できていなかったデータを統合し、行政の課題解決につなげることに期待しています。


―地域創造課として、データを積極的に活用していくということですね

志知さん:地域ブランディングは街づくりや人づくり、移住定住、交流の促進に不可欠であると考えています。愛されるブランドや、旗印となるブランドなど、さまざまな行政施策やまちづくりの礎となると思っています。そのようなことを実施していく際には、市民の納得感や共感を得ることが重要です。私たちは地域創造課ですので、DX推進でなく、情報推進系の課とは異なります。マーケティング担当課がスマート公共ラボ for GovTechプログラムを導入したことが面白いと思っています。

LINEのプラットフォームを使ってデータの収集や、アプリケーションの提供を通じて、市民や観光客など外部の訪問者も含めて、伊那市との接点に関するデータを集められると考えたことが導入の理由です。彼らが何を求め、何に興味を持っているかを把握する、データ利活用型の伊那市を作っていこうという考え方です。結果的にLINEを通じて情報発信や電子決済、電子申請が容易になることで、DXによる利便性が高まっていき、働き方改革に繋がればと思います。その両輪として、データもしっかりとっていきたいです。


地方自治体の
プロモーション戦略の重要性


―AIタクシーの導入や、DXへの積極的な取り組みについて、その背景や理由を教えてください

諸田さん:今回の導入により、DX推進部署や広報部所と、強固なアライアンスの構築の必要性について考える機会を得ました。新しいプラットフォームが導入されることで、既存の情報発信領域に混線が生じる可能性がある点にも留意する必要があります。この導入は地域創造においても応用が可能であり、DXを地域創造で多様な用途に活用することができます。積極的なDX推進の視点や、データ取得の可能性といった、従来は見過ごされがちだった利点がございます。

特に企画政策課では、AI乗り合いタクシー、ドローン物流、遠隔医療などに積極的です。これらのイノベーションに積極的に取り組む理由は、福祉の充実と市民の豊かさの向上を目指していることにあります。伊那市は、持続可能な取り組みを強く推進しており、地域の82%が森林であるため、自然と共存して暮らし続けられる生活を目指しています。ただ、このような政策を地方社会で実施する際、特に高齢者の移動手段の確保など、多くの課題が生じることがあります。そのため、AI乗り合いタクシーの導入など、デジタル技術を活用して効率的に問題を解決しようとしています。地方都市のモデルとなるような施策を目指しており、市長もデジタルを活用して「トップランナーになりたい」と掲げています。

私たちの取り組みは、単に目立つことを目的としているわけではありませんが、地方自治体が持続可能な方法で生き残るためには、知名度を高めるプロモーションも重要な戦略の一つです。名前があまり知られていない地域が生き残るためには、新しいDXを積極的に行い、それを広くプロモーションすることが重要になります。


DXを通じた
市民サービスの革新


―導入が決定してから、公開までの構築作業はスムーズでしたか?

諸田さん:構築していく際には、少し時間と調整のかかる方法で導入を行いました。DX系の導入においては、もっとスムーズに情報を集められるはずですが勉強会を重ね、庁内で手を挙げてもらって参加いただく形で進めました。結果として構築には時間がかかり、1ヶ月という短期間での作業が求められました。特に庁内の調整や取りまとめが難しく、庁内に営業をかけているような感覚でした。DXでのデジタル化と効率化を目指す中で、その意義を理解してもらうまでには時間がかかりました。

志知さん:LINEは質と量のバランスが重要です。質が落ちれば友だちが減少し、ブロックされることもあります。そのため、庁内の取りまとめや一体感を醸成する取り組みは重要ですし、現在もまだ十分ではないと感じています。

諸田さん:営業に行き、何を実現したいのかを伺い、最初に乗り出してもらうための構築相談を行うことが、これからの取り組みの成功には不可欠だと考えています。


マーケティングとしての
実践的活動の価値


―導入後、これまで抱えていた課題は解決されましたか?

志知さん:役所の窓口に「LINEの登録方法を教えてください」など、年齢層の高い方々からの質問が増えています。これまで私たちは、そういった年齢層との接点が少なかったのですが、多くの住民の方々が情報を求めていることが、明らかになりました。これは直接的ではないかもしれませんが、課題解決への一歩と感じています。地域創造課だけでなく、市民課にも声が広がれば、これまでの課題に対する新たなアプローチが可能になるかもしれません。データだけでなくリアルな行動からも、マーケティングの成果が見えてきたと感じます。徐々に解決策への道筋が見え始めている段階かもしれません。

諸田さん:LINEによって集まるデータには、興味深いものがあります。実は友だち登録を県外の方々もされていることなどもわかります。データが整理され、分析されることで、今後どのように展開していくかが見えてくるでしょう。始まりの段階ではありますが、解決に向けて動き出していると感じます。


オープンデータの活用で
利便性の向上を実現できた


―ところで、予約機能について反響はいかがですか?

諸田さん:担当の課との詳細な打ち合わせがまだ完全には整っておらず、一般向け情報はまだPRしていません。DX推進部署や広報部署で、どのような運用マニュアルの作成が必要なのか、という部分が整理中です。今後、一般公開された際には、より多くの利用者が関心を持っていただけるだろうと予想しています。今回、窓口予約システムを導入したのは、営業にいった課で伺った要望や改善点を取り入れ、実際に実現可能な機能をピックアップしたという形です。今後はさらに「これがやりたい」「あれがやりたい」といった新たな要望につながっていくと思います。

当初は特定の設定でしか利用できないと思われていたサービスも、電子申請を通じて実現可能になり、ハードルを超えられることがわかってきました。今後は、公的個人認証の利用も検討していま すが、まずは施設予約や相談の予約をLINE で予約できる施設や項目を増やしていき、住民票の写し、戸籍謄本・抄本発行などの手続きも、2024年度中にはオンラインで可能になることを目指しています。

―スポット検索機能で、AEDやWi-Fiなどを検索できるようにされた理由を教えて下さい

諸田さん:私が、市内全体のオープンデータを持っていたということが、機能を追加することになった大きな理由だったかと思います。これらのデータはスプレッドシートにまとめられており、すでに公開はされていましたが、実際にはほとんど利用されていませんでした。そこで、このデータを有効活用できないかと考え、最終的にLINEを通じて情報提供するという形で、オープンデータを活用いたしました。AEDの位置情報やWi-Fiスポットって探しづらいものですが、LINEならわかりやすく、いざというときの利便性が高まります。特に海外から訪れた旅行者にとっても、非常に便利なものです。本来は公衆トイレの情報も掲載したかったのですが、そのデータを私が網羅していなかったので、今後の掲載を予定しています。

志知さん:オープンデータがまず先にあって、それを活用するためにLINEを活用したということが、逆転の発想で面白いと思いました。

スマート公共ラボ活用事例。長野県伊那市の事例。LINE画面AEDスポット検索1。スマート公共ラボは、LINE公式アカウントを活用し自治体業務のDXを実現できるサービス。広報のセグメント発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報など様々なお問合せをLINEで対応でき、また、コロナワクチン予約システムなどオンラインで各種申請、予約や、住民票のコピーなど決済まで完結できる電子申請など様々な自治体業務をデジタル化することができます。
スマート公共ラボ活用事例。長野県伊那市の事例。LINE画面AEDスポット検索2。スマート公共ラボは、LINE公式アカウントを活用し自治体業務のDXを実現できるサービス。広報のセグメント発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報など様々なお問合せをLINEで対応でき、また、コロナワクチン予約システムなどオンラインで各種申請、予約や、住民票のコピーなど決済まで完結できる電子申請など様々な自治体業務をデジタル化することができます。

現在地から、近くのAED設置場所をその場で検索できるスポット検索


—以前より、さまざまなデータを所有されていたのですか?

諸田さん:私自身、昔からデータ関連を集めることが好きで、さまざまな情報を収集していました(笑)。そのため、以前から持っていた情報を有効活用することができました。


新機能拡充と
市民参加型の取り組み


―構築作業や運用を通して、プレイネクストラボのサポート体制はいかがでしたか?

志知さん:システムや運用において滞りなく、課題も適切に解決されていく印象で、素早い対応やしっかりとした取り組みが感じられます。勉強会でプレイネクストラボさんの執行役員の鈴木さんや、ずっと面倒を見てくださっていた平井さんとの話し合いも有意義でした。開発や機能の提供にも積極的で、随時標準機能で提供されるなど、新しい取り組みに挑戦し続けていて、なおかつ手頃な価格で提供していただけることがありがたいです。今後も新しい試みに対して柔軟に対応していただき、我々に寄り添ってくださるので、とっても心強いサポートという印象です。


―では最後に、今後の展望をお聞かせください

諸田さん:先日の説明会に参加した職員から、少々難易度高めの宿題をいただきました。健康診断のチェック表が約100パターンの組み合わせがあるのですが、「どの検査を受けるべきか」ということを、LINEを通じて案内できないかというアイデアでした。このような複雑な要望に関しても、私たちと伴走していただいているプレイネクストラボさんにご相談して、フィードバックをいただくことによって、「DX」っていう意識を植えつけてもらっていると感じています。機能などの活用や展開だけでなく、「DX」という意識付けの種をまいてくださっていることが、スマート公共ラボ for GovTechプログラムの最もすごいところなのかなと感じています。特に、LINEという日常的に使われるツールを通じて、直接市民や職員にサービスを提供することが、大きなメリットだと思っています。郵送料の増加などの問題を解決する手段としても、伊那市のLINE公式アカウントを活用することで、効果を期待できます。さらに、データ収集ツールとしても、LINEが事実上のインフラとして機能している現状を踏まえ、市民の活動や経済活動の促進、データ収集にも貢献しています。たとえば、桜の季節には入場券をチケット化することで、訪れる人数をデータとして把握できます。県外の方にも友だち登録していただき、地域の魅力を伝えるキャンペーンやセグメント配信などを通じて、地域ブランディングや市民の積極的な参加を促すことも視野に入れています。


ポジティブな活用法で
市民参加型のイベントを実施


諸田さん:また、通報機能は本来はネガティブなことに関する活用法ですが、せっかく画像や位置情報も送れるので、伊那市の美しい夕陽や郷土料理などを送っていただくキャンペーンも実施できます。市民自らが作る、伊那市の魅力を網羅したオープンマップなども作れるなど、通報機能のポジティブな活用も考えられます。受動的な関わり方から能動的な参加へと変化が生まれ、市民や職員のデジタル化に参加する意識もさらに高まっていくことを期待しています。職員からも多くの相談が寄せられるようになり、デシタル化によって意識が変化し、可能性が広がっていくことを実感できることが、大きな収穫だと思っています。

(2024.3月取材)

※ ※ ※

伊那市の地域創造課によるLINEを活用した革新的なマーケティングとブランディング戦略は、自治体の情報発信と市民サービスの向上に新たな可能性を開きました。これまで抱えていた課題を解決し、市民との接点を増やすと同時に、地域の魅力を全国に発信するための基盤を築くことに成功しています。市民生活の質の向上や、業務効率化はもちろん、地域経済の活性化にも寄与しています。伊那市の例は、他の自治体にとっても有益なモデルとなるでしょう。

デジタル技術を活用した地域創造の可能性を広げたい自治体の方は、ぜひプレイネクストラボまでお問い合わせください。全国の自治体でスマート公共ラボ for GovTechプログラムの導入・運用を支援してきた豊富な経験を活かし、適切な解決策をご提案いたします。挑戦を続けている伊那市のように、革新に向けた歩みを踏み出してみませんか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スマート公共ラボ/GovTechプログラムについてのお問い合わせ

「スマート公共ラボ」のサービス内容に関するご質問・ご相談や、取材や広報について、以下のフォームよりプレイネクストラボ株式会社にお気軽にお問い合わせください。自治体さまや公共機関の方からの他、事業者さまから連携のご相談も承ります。