【レポート】第7回スマート公共ラボ活用事例セミナー ~住民の60%が利用する福岡県春日市の事例~

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プレイネクストラボ株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役:柏 匠、以下 プレイネクストラボ)は、GovTechプログラムの「スマート公共ラボ」で提供している最新の行政DX事例を紹介する無料オンラインセミナーの第7回を1月26日(金)に開催しました。今回のテーマは「住民の60%が利用する福岡県春日市の事例」。このブログでは、セミナーの内容をわかりやすくレポートします。

スマート公共ラボのサービス

スマート公共ラボは、自治体職員の業務効率化と住民の満足度向上をサポートするサービス。スマート公共ラボ with LINE SMART CITY GovTechプログラムと電子申請を柱に、「役所に行かない・窓口で待たない・文字を書かない」を叶える自治体のデジタル総合窓口として活用されています。

スマート公共ラボ with LINE SMART CITY GovTechプログラムは、帳票作成、細かく条件設定したセグメント配信、複雑なシナリオ配信(チャットボット)など、LINE公式アカウントの標準機能だけでは補えない、充実したサービスが特長。電子申請は、公的個人認証にも対応しており、様々な行政の手続きをLINE公式アカウントから手軽に行えます。

スマート公共ラボは現在、広域自治体を含む、全国約100の自治体公式アカウントにサービスを提供。各自治体のご要望に合わせて、機能やデザインのカスタマイズにも柔軟に対応しているほか、負担なくシステムを導入できるサポート環境が整えられています。

山形市・鳥取市の事例

山形県山形市では、スマート公共ラボの「カレンダー機能」を利用して児童遊戯施設の予約を実施し、予約開始4日間で1ヶ月先の予約枠が埋まりました。施設の利便性の向上や混雑緩和に役立てられています。

参考:スマート公共ラボ活用事例セミナー山形市の事例

鳥取県鳥取市の公式アカウントでは、合計数千パターンもあるゴミ捨てのお知らせ配信を実施。地域ごとの収集スケジュールが複雑でも、使い慣れたLINEからお知らせを受け取れるので 住民にとって便利なコンテンツとなっています。

スマート公共ラボお試しキャンペーン

本セミナーにご参加いただいた方限定で、3ヶ月間お試しできるキャンペーンを1月31日まで実施。現在ご利用のLINEアカウントに、テスト環境も含めてデモコンテンツを構築します。

福岡県春日市の事例

今回のセミナーでは、福岡県春日市役所の経営企画部 秘書広報課 広報広聴担当 榎田正治氏に春日市のLINE活用方法について詳しくお話をうかがいました。

春日市は、福岡市の中心まで10分でアクセスできる住宅都市。面積は県内の市の中で最小ですが、人口密度は九州で最も高い市です。

LINE公式アカウント導入の背景

榎田氏:住民のニーズに合った情報提供が住民満足度の向上につながると考えていた中で、従来の市報やウェブサイトだけでの発信は手詰まり感があり、行政と市民の距離を近づけるためにLINEの導入が効果的だと感じました。

広報DXを実現するためには「プッシュ型」「ユーザーをセグメントして配信できる」「即時性がある」「幅広い年齢層が利用できる」「アクティブユーザーが多い」という観点が重要。LINEはこれら全ての要件を満たしており、今後の行政広報にはマストな媒体だと言えます。

春日市LINE公式アカウントの概要

榎田氏:サービスは2020年8月31日に開始し、友だち数は6万7千人超え(2023年12月18日時点)。人口カバー率は約60%で、ブロック率は6.7%となっています。男女比はおおむね半々で、LINEアカウントの友だち登録者の年齢層は、春日市の人口構成と近い年齢層で構成されています。

春日市のリッチメニューは、「基本メニュー」「子育てメニュー」「市政情報メニュー」の3つのタブで構成。住民からは「ワクチンの予約が簡単にできて便利」「ゴミの出し忘れがなくなった」「市の情報を簡単に受け取れてうれしい」などの声があり、導入当初から住民の満足度が高いサービスとなっています。

アカウントの運営体制

榎田氏:LINE公式アカウントを統括して管理するのはデジタル政策課。意思決定や、どの機能を開発していくかという全体の舵取りを担っています。プレイネクストラボのような開発パートナーの主なメインとなる窓口もデジタル政策課が担当しています。

市のIT・デジタル部門が、システム構築や管理、契約などのIT・システムに関する専門性が高い範囲を担当し、広報部門は新機能やサービス検討、ルール整備など運用面の管理に注力しています。それぞれの強み、弱みを補完し合って運用することが春日市の安定的な運用につながっています。

運用で重視しているポイント3選

1)友だち登録者数を増やす

榎田氏:ローンチ直後はインパクトを重視したPRが大事。広報誌の表紙での告知と合わせて、春日市がLINE公式アカウントを導入した理由や意気込みをインタビュー形式で伝えました。

コロナ感染拡大時は、春日市から市内の感染情報やコロナ予防法をLINEでお知らせし、この時期に友だち数が右肩上がりに増加しました。また、年度末にごみ分別機能の案内をした時も増加しています。このように、住民の不安解消やニーズに沿った情報発信をしたことが、友だち登録につながったと考えています。

春日市が実装した学習コンテンツを案内した際は、チラシを小学校、中学校のホームルームで配ったことで、数日の間に登録者が2,000人ほど増えました。ターゲット層に直接訴求することと、機能ごとの利用シーンや活用できる時期を想定して、そのタイミングで発信することが非常に効果的だと実感しています。

2)ブロックを減らす

榎田氏:春日市では、友だち登録者数以上に、ブロック数の推移を意識してトラックしています。これまでブロックが多かった時の共通パターンは、「長文・難解な内容」「多すぎる通知」「内容が啓発系」の3点。その分析を活かして、メッセージは300字程度を目安に、配信日時を統一して、できる限りセグメント配信をするように意識。住民が有益だと感じられる情報を届けられるように心がけています。

3)配信を“読ませない”

榎田氏:住民がLINEの配信に対してマイナスなイメージを持たず、伝えたいことを短時間で理解できるように「読む」ではなく「見る」だけで伝わる配信を意識。春日市の広報担当で行っているクリエイティブチェック事業の一環で、LINEでも担当部署からもらった原稿を元に広報担当でリッチメッセージを作成し、タイミングを調整して配信しています。

「メリハリをつける」「文章は短く」「色を使いすぎない」という作成ルールを決め、便利なツールを使いながら 2、30分くらいでリッチメッセージを作成。似たようなビジュアルにならないよう、あえてテンプレート化はせず、簡潔で目を引く内容にしています。

事例紹介 子育て支援機能

榎田氏:子育ては住民のニーズが圧倒的に高い分野ながら、情報が多く複雑で、申請の度に役所に行かなければいけないという課題がありました。これらを踏まえ、春日市では「ひとりじゃない、市全体がLINEを通して子育てをサポートする社会へ」というコンセプトを設定。最適な情報に素早くアクセスできるように工夫し、組織を横断して情報提供を行っています。特定のターゲットを定めて満足度の高いサービスを提供することで、最終的にLINEの普及につながっていくと考えています。

住民ニーズを意識する

榎田氏:機能の実装や運用の際にユーザーが求めることは、ニーズや課題を解決することと利便性。例えば、春日市でコミュニティバスの時刻表案内機能を作りましたが、3タップ以内で希望の時刻表に到達でき、スクロール操作が不要なトークメッセージで案内する設計にしました。その他、市民の声を反映した配信や細かなカスタマイズを行なったことが、LINE公式アカウント、ひいては市への満足感や信頼感を高めることにつながり、市役所へのクレームや問い合わせも減ったという実感があります。

住民のニーズを知るため、定期的に満足度調査を実施。春日市で行ったLINEアンケートでは、調査期間1週間で回答数は4,664件、回答率7.65%でした。膨大な手間や時間、費用がかかる郵送の市民意識調査に対して、LINEアカウントを使えば気軽に調査が可能。住民の声を聞くことで新たな発見があり、より良いサービス提供へ役立ちます。

Q&A事前質問

1)運用体制で苦労したことや、運用までの期間について

榎田氏:実際に始めてからよりも始める前が一番大変でした。LINEアカウントを始める時に、広報だけでは難しい部分があるからデジタル政策課も一緒にやっていきませんかといった形で組織づくりをしていきました。苦労した点でもありますが、組織づくりをすることでそれ以降のハードルが一気に下がった気がします。

運用までの期間は、ゼロベースからのスタートだったこともあり、構想期間も含めて3ヶ月かかりました。構想期間を除けば、内部の調整からマニュアル作成、機能開発、検証期間まで大体2ヶ月でした。

2)利用率6割は素晴らしいと思います。「これをした時に利用者が増えたな」といった、住民への効果的な周知方法はありますか?

榎田氏:まずは、スタートダッシュのPRが鍵でした。その他には、ワクチン接種予約機能やダイレクト型の告知を行った際に利用者が増えました。スタンププレゼントやクーポン発行などのキャンペーンだと、その後に友だちを解除されたり、ブロックされたりしやすいので、ニーズに合致した機能を作って、その利便性をPRするという地道な手法が現実的かと思います。

3)リッチメニューの作成は、それぞれの所管課がされていますか?本公式LINEはアカウントが無制限と聞いていますが、アカウントは各課に配付されていますか?

榎田氏:リッチメニューは広報担当でデザイン設計して作成しています。リッチメッセージも主に広報担当で作っていますが、場合によっては担当所管の方で作ってこちらが確認して配信する時もあります。

アカウントは各課に配布しておらず、広報担当でレギュレーションを統一して配信しています。今はメールと連動して配信しており、そういった部分はマニュアルで定めて、職員に対してもレギュレーションを周知するようにしています。今後は研修も行っていく予定です。

4)運用についての庁内の意見(負担感なども)

榎田氏:メッセージ配信に関しては、担当課の負担はあまりないと感じています。たまに配信の仕方がわからないという問い合わせもありますが、操作は難しくないので、あまり心配しなくても大丈夫かと思います。

一方で、機能維持の部分では負担感があるかもしれません。春日市では道路や公園の通報機能を維持するために、いただいた通報に対して一件一件、現場に出て確認して対応しているので、担当所管は負担もあります。ただ、最終的に電話で受けるかLINEで受けるかの違いなので、むしろ市民側からしたら問い合わせしやすくなったという部分で、利便性が高い機能だと考えています。

5)どのようにして友だち登録者数を増加させましたか?

榎田氏:例えば特徴的な機能を実装したら、プレスリリースでマスコミに報道してもらう取り組みをしています。春日市ではLINEに関してプレスリリースを4,5回発表しており、新機能の実装だけでなく、友だち数が何万人を突破した、人口の何%を突破したといった情報も定期的にプレスリリースを行うようにしています。


次回イベントの参加にご興味ある方は、スマート公共ラボLINE公式アカウントにご登録いただき、新着情報をお待ちください。

LINE ID @169hntco
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