プレイネクストラボ株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役:柏 匠、以下 プレイネクストラボ)は、GovTechプログラムの「スマート公共ラボ」で提供している最新の行政DX事例を紹介する無料オンラインセミナーの第6回を11月9日(木)に開催しました。このブログでは、セミナーの内容をわかりやすくレポートします。
今回は「LINE公式アカウントを活用した市民サービスの利便性向上とニーズに合わせた情報発信」をテーマに、山形県山形市の事例を紹介。山形市井上副市長との特別対談企画も実施しました。
Contents
スマート公共ラボとは?
スマート公共ラボは、自治体職員の業務効率化と住民の満足度向上をサポートするサービス。スマート公共ラボ with LINE SMART CITY GovTechプログラムと電子申請を柱に、「役所に行かない・窓口で待たない・文字を書かない」を叶える自治体のデジタル総合窓口として、全国約100の自治体公式アカウントで活用されています。
スマート公共ラボ with LINE SMART CITY GovTechプログラムについて
スマート公共ラボ with LINE SMART CITY GovTechプログラムを導入すると、帳票作成、細かく条件設定したセグメント配信、複雑なシナリオ配信(チャットボット)、施設やイベントの予約に役立つカレンダー予約、緊急時に特化した災害モード、位置情報から案内できるスポット検索、決済の機能を使うことが可能。LINE公式アカウントの標準機能だけでは補えない、充実したサービスが特長です。
電子申請について
スマート公共ラボの電子申請は、マイナンバーカードを用いて本人確認が必要な申請と、交付料や手数料の支払いに便利なオンライン決済が可能。LGWANのアクセスにも対応しており、既存の業務用パソコンから利用できるため、導入の負担が少ないのも魅力です。
山形市の街作り
山形県の県庁所在地である山形市は、豊かな自然に囲まれ、都市機能も充実した暮らしやすい街。健康医療先進都市として医療の充実に力を入れているほか、文化創造都市として、山形国際映画祭や山形交響楽団、芋煮会イベントなど文化面の発展にも尽力しています。
「歩くほど幸せになるまち」というテーマで中心市街地の活性化に取り組み、公共空間のWi-fiの整備やSNSを使った情報発信、キャッシュレス化を推進しています。
山形市では子育て支援にも力を入れ、デジタルとリアルを組み合わせて効果的に支援をしています。LINEを活用した「おやこよりそいチャットやまがた」によるデジタルソーシャルワークや、出産・子育てアプリ「母子モ」での相談体制の整備などに取り組んだ結果、令和4年度は出生数がわずかながらも増えたそうです。
公式LINEアカウントを活用した山形市の取り組み
山形市は令和4年4月、プレイネクストラボとLINEを活用した市民サービスのDX推進に係る連携協定を締結。LINEのメニュー画面を「基本メニュー」「暮らし・子育て」「山形市の魅力」の3つにタブ化することで、よりわかりやすく山形市の情報を提供できるようになりました。LINEから児童遊戯施設の予約ができたり、前日にごみの収集日を通知したりといった機能が好評を受け、令和5年10月末の登録者数は66,000人を超し、市民の約4人に1人が登録しているという状況です。
リッチメニュー
「基本メニュー」には市民に必要な情報を盛り込み、山形市ホームページへ直接遷移できる作り。「暮らし・子育て」タブでは、チャットボット機能を利用して利用者が情報を検索しやすいように工夫し、証明書郵送の交付申請もできるようになっています。観光や移住に特化した「山形市の魅力」タブは、山形市のサイトへ誘導する仕組みで、市内外の人が山形市の情報を簡単に入手可能。
セグメント配信
セグメント配信では登録者が欲しい情報を選択できるため、効果的に情報発信ができ、ブロック率を下げる効果も。コロナワクチンの接種情報や、ふるさと納税、移住、就職、子育てに関する情報などを選択肢として設け、登録者にはそれに沿った情報を届けています。
施設予約機能
令和4年7月に屋内児童遊戯施設「シェルターインクルーシブプレイス コパル」等の予約機能を追加したところ大好評。それまで公式LINEアカウント登録者の伸び率は1%ほどでしたが、この機能を設けた月は10%と、グッと伸びた実績があります。
ごみ収集日通知機能・チャットボット機能
居住地を設定すると、前日の夕方にごみの収集日を通知。埋立ごみなど、月に一度の収集日のリマインドが好評を得ています。さらに、チャットボット機能により、ごみの名称を入力すると分別方法を自動で応答。チャットボットは子育て情報の提供にも活用されています。
通報機能
山形市は、道路の損傷状況、公園、河川、不法投棄について市民が通報できる機能を設置。対応状況は市公式ホームページでお知らせしています。
その他、コミュニティバスや除雪情報の提供にもLINEアカウントを活用。様々な機能を活かして、暮らしやすい街作りを進めています。
LINEによる行政DX対談
今回のセミナーでは、山形市副市長 井上貴至様(以下:井上氏)、プレイネクストラボのアドバイザーを務めるGlocal Government Relationz株式会社の代表取締役で元横須賀市長の吉田雄人様(以下:吉田氏)、プレイネクストラボGovTech事業部長の鈴木勝(以下:鈴木さん)の3者による、DXにまつわる対談企画を開催。導入を検討している自治体の参考になる貴重なお話をうかがうことができました。
LINEでの行政DXの意義と可能性
鈴木さん:山形市では、令和2年2月に公式LINEアカウントを開設し、令和3年6月から機能拡充という早いタイミングでDX化を進めてきましたよね。ホームページや他のSNSもありますが、その中でLINEを使う意義は何でしょうか?
井上氏:市民にとって身近なツールを使うことが大事だと思っています。他のアプリではなかなか普及しないこともありますが、LINEならば世代を問わず多くの人に使われていますよね。今はLINEを中心に広報デジタル化を進めているところです。
吉田氏:これまでは、行政からの情報発信は回覧板がメインでしたよね。でも町内会への加入率が低下して、別の選択肢も考えざるを得なくなったという背景もあるんじゃないかと。情報の届けにくさについて、LINE活用前はどのように感じていましたか?
井上氏:人口が少なければアナログでもなんとかなりますが、山形市くらいの規模になると情報をきちんと届けることが難しいです。だからこそデジタルで補うことが大事だと思っています。
鈴木さん:山形市では現在、人口に対して4人に1人がLINE公式アカウントの友達登録をしていますが、今後の目標はありますか?
井上氏:国内のLINE加入率が8割を超えているので、それと同じくらいを目指したいです。
吉田氏:行政の効率化という観点では全てDXに振り切れると良いですけど、情報を届けるという観点でいくと、少しレイヤー分けして、移行期間として考えると良い気がしますね。
鈴木さん:世代やターゲットに応じて、どのようにリーチするかが大切ですよね。8割を達成するためには、どんなことをやるべきだと考えていますか?
井上氏:セグメント配信によって、それぞれが欲しい情報を得られるようにしつつ、リアルとデジタルをいかにうまく組み合わせるかを意識しています。子育ての悩みをチャットで気軽に相談できたり、子ども食堂では実際に声をかけたりとか。セキュリティ保った上で、部署や組織を超えて情報共有できるのもデジタルの強みですよね。
鈴木さん:吉田氏は2017年まで横須賀市の市長をされていましたが、当時はあまり行政DXの存在感がなかったのですか?
吉田氏:2000年ぐらいのe-Japan構想ぐらいから重要性は感じていました。今は、スマホの普及率や本人確認の方法の確立など、このDX文脈で存在感が一層増している気がします。
鈴木さん:もし当時、今のLINEみたいなものがあったとしたら、何かやりたかったことはありますか?
吉田氏:すぐ飛びついていたでしょうね。アンケート機能で、自治体の合意形成などに取り組めたら、さらに面白い地域作りにつながるかも、なんて妄想しちゃいます。
鈴木さん:山形市では、今後LINEでやっていきたいことはありますか?
井上氏:他地域の良い事例があれば参考にしつつ、これからも市民の皆さんが求める情報を全部追加していきたいです。
吉田氏:LINEの決済の利用者が増えたり、PayPayとの統合がもっと進んだりすれば、また可能性が広がりそうですよね。
DXの今後の課題
鈴木さん:山形市では、スマートシティ推進基本計画を策定していますが、DX推進においての課題はありますか?
井上氏:今一番力を入れているのは、学校ICT化です。今年から電子黒板を1学年に1つ入れたり、プログラム教育のライフイズテックレッスンを全中学校に導入したりしています。学校や介護、保育の現場でもデジタル化を進めて不足部分を補っていかなければと考えています。
また、各自治体が競い合っていると非効率な部分もあるので、標準的に入れた方が良い機能については、国がもっと後押しをすべきだと思いますね。山形市は、整備を進めているコミュニティサイクルをはじめ、官民連携で進めています。
鈴木さん:吉田氏の官民連携という立場から見えている、行政DXの今後の課題はありますか?
吉田氏:やっぱり地域の活性化や課題解決のためにDXを手段として位置づけることが大事です。民間と組む時にDXという言葉で、行政が食い物にされてしまうリスクもあるんじゃないかと。だから地域の課題や方向性をきちんと示しておく必要がありますよね。
鈴木さん:そろそろデジタル田園都市国家構想交付金申請のタイミングですが、これから申請したい案件はありますか?
井上氏:メインはやはり学校ICTです。定期的に全校の校長と教育委員会、市長、副市長が意見交換しているのですが、今年、電子黒板を1学年に1つ入れたらかなり評判が良かったんですよ。電子黒板によって先生の負担が減ったり、生徒も発表をしやすくなったり。でも小学校が36校、中学校が15校あるので、ざっくり4億円以上かかっちゃって。
これをなんとかしなきゃと思って、文科省のデジタルプロジェクトチームとも打ち合わせをしながら、良い財源がないか探っています。なかなか難しいですけど、チャレンジしていきたいです。
自治体職員の役割と意識改革
鈴木さん:山形市はDXの導入を進めていますが、井上副市長が就任されてから職員の役割や意識改革の面で、結構変わってきた部分もあるのではと思います。その辺りいかがですか?
井上氏:市長が就任してから企業と連携するのが当たり前になって、いろいろな企業と包括協定を結んでいます。行政だけではできないことも多いので、企業のノウハウを生かしながら一緒に取り組んでいます。
例えば今、資生堂と組んで女性活躍のプロジェクトやワークショップをやっていますが、気持ちを切り替えるためにも最初にメイクアップをしてからワークショップに臨むんですよ。こういう発想って行政だけじゃ出ないですよね。デジタルも同じで、LINEやプレイネクストラボと組んでいるから、多様なことができますし、良いものはどんどん使っていきたいです。
鈴木さん:職員に目指してほしい役割や、意識改革の面で期待していることはありますか?
井上氏:市役所の本庁舎に約1,500人いるのですが、各職員が市長の分身だと意識してもらうために1,500人未来創造研修をしました。部署や役職、年齢を超えてしっかり対話して関係性を築くことが大事なので、デジタルツールもうまく使って、横断的なコミュニケーションを取りやすくしています。
よく報告・連絡・相談と言われますが、管理職は「報連相のおひたし(怒らない・否定しない・助ける・指示をする)」が大事かと。まずいなと思う内容こそ早めに話し合って、組織みんなで解決していけるように意識しています。
鈴木さん:吉田氏は、職員の役割や意識改革についてどうお考えですか?
吉田氏:行政職員の皆さんは売り上げなどで評価されるわけではないので、昨年と同じことを丁寧にやることが一番大事だと思いがちですよね。でも世の中は「もっと市民の方をちゃんと見てよ」という雰囲気になっています。市民の満足度を高めるために、どうあるべきかを前向きに考える職員のマインドが、これまで以上に求められるだろうと思います。全員が同じマインドでいるのは難しいですが、求める姿勢を市のトップが発信していくことはとても大事ですよね。
鈴木さん:LINE機能拡張の導入を検討している人に向けて、アドバイスがあればお願いいたします。
井上氏:行政は地域独占なので、良いところはどんどん真似してやってみるべきだと思います。うちはプレイネクストラボと協力してすごく良くなっていますよ。
鈴木さん:ありがとうございます。吉田さんはいかがでしょうか?
吉田氏:まだLINEを導入していない自治体もあるので、プレイネクストラボにとってはビジネスチャンスですし、導入してない自治体が導入を検討してデジタルツールで市民とコミュニケーションを取れるようになると、政策展開のステージが上がるような気がします。なので、セミナーを聞いている方で、まだLINE公式アカウント持ってない場合はすぐに導入すべきですね。
あとLINEの機能を使い切っていないのも、もったいないので、どんどんやっちゃいましょうとお伝えしたいです。
鈴木さん:本日はありがとうございました。導入を検討している方の参考になればと思います。プレイネクストラボは今後も、LINEアカウントを活用した「with LINE SMART CITY GovTech プログラム」による充実した機能と、公的個人認証に対応した「電子申請」によって、行政サービスのデジタル化を実現していきます。
次回イベントの参加にご興味ある方は、スマート公共ラボLINE公式アカウントにご登録いただき、新着情報をお待ちください。