【佐賀県唐津市】「地域活性化起業人」を活用し官民一体でDX化を推進中!GovTechプログラム導入をサポートしたソフトバンク社の関わり方とは?

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佐賀県唐津市による自治体LINE公式アカウントの活用事例。スマート公共ラボは、LINE公式アカウントを活用し自治体業務のDXを実現できるサービス。広報をセグメント化した情報発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報のお問合せや、コロナワクチン予約システムによる各種申請・予約などの自治体業務をデジタル化することができます。

佐賀県唐津市は2021年1月より、ソフトバンク株式会社(以下ソフトバンク社)からDX支援を受けています。これは総務省が創設した「地域おこし企業人交流プログラム(現:地域活性化起業人)」を活用したもので、ソフトバンク社の社員が唐津市に出向し、業務のデジタル化支援、IoT活用支援、市政情報発信強化など、専門的かつ技術面におけるサポートをしています。そこで今回、実際に唐津市がGovTechプログラムの導入を決定し、新型コロナワクチン接種予約でLINEを活用するまでの経緯や現状、ソフトバンク社の関わり方について、各部署のご担当者にお話を伺ってみました。

“自治体のスマートシティ化を推進したい”
唐津市とソフトバンク社の思いが合致した

佐賀県唐津市による自治体LINE公式アカウントの活用事例。スマート公共ラボは、LINE公式アカウントを活用し自治体業務のDXを実現できるサービス。広報をセグメント化した情報発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報のお問合せや、コロナワクチン予約システムによる各種申請・予約などの自治体業務をデジタル化することができます。
左からソフトバンク社 鐘ヶ江仁國氏、佐藤伸行氏、唐津市 保健医療課 中村千秋係長、石崎翔平氏

懸念点を先回りしてフォロー
導入前から導入後も安心だった

—まず、唐津市や市役所のこと、所属されている部署のご紹介をお願いします

DX推進室 岡さん:唐津市は、九州北西部の玄界灘に面し、海・山・川がもたらす食と文化に恵まれた風光明媚な街を形成しています。過去の合併により、平成18年には現在の唐津市となりました。人口12万人を抱え、唐津市役所本庁舎をはじめ、市民センター8箇所により市政を運営しています。私が所属しているのは情報政策課で、パソコンなどの機器の管理からシステム全般の保守についての業務を担っております。


—GovTechプログラムを導入する以前より、自治体として抱えていた課題や悩みはありましたか?

DX推進室 岡さん:情報発信においては、以前から市の公式ホームページを運営しておりますが、その性質上、市民の方が欲しい情報へ能動的にアクセスする必要がありましたので、プッシュ型の情報発信の必要性を感じていました。


—唐津市として自治体DXを推進すべき理由や、目指している理想的な体制を教えてください

DX推進室 岡さん:もっと便利で快適な社会の実現や、住民の利便性向上のためには、デジタル技術を活用して行政サービスを改革することが不可欠だと思います。そのためにはデジタル技術を業務と結び付け、改革を推進することができる人材を育成し、各職場に配置していくことだと考えています。

—現在もソフトバンク社が唐津市にDX支援で入れられていますが、どのような経緯と目的でしたか?

DX推進室 岡さん:唐津市は、地方創生に向けて企業からの提案を受け付けておりました。また、単なる庁内のデジタル化にとどまらず、自治体のスマートシティ化を推進したいと考えていたところ、総務省の「地域活性化起業人」を活用することで、専門人材の派遣が可能な旨のご提案をソフトバンク様より頂きました。そこで、課題解決へ向けて民間のノウハウが活用できると期待し、提案受け入れへと繋がりました。

ソフトバンク社 佐藤さん:もともと九州地区のCSR部門が唐津市様と繋がりをもっていました。一方、九州IoT技術部では2018年より自治体や地元企業様に対してDX推進のサポートをするという取り組みを進めており、CSR部門からの紹介で唐津市様と出会うことができました。そして、総務省が創設した「地域活性化起業人」を利用することで唐津市様の負担が少なくソフトバンク社員を唐津市様へ出向できること、唐津市様でもDX化に向けて人材や企業を探していたこともあり、お互いの思いが合致した形で、唐津市様へのDX支援となりました。社会全体的にDX化は避けられないものとして、デジタルデバイドを解消していくというのも大きな目的になります。

GovTechプログラムの
拡張性の高さが魅力だった

—GovTechプログラムの導入を決断した理由や、導入後に期待していたことを教えてください

DX推進室 岡さん:LINEを活用した「持ち運べる役所」を構想していましたところ、拡張性が高いGovTechプログラムがその実現に最も適していると考え、導入を決断しました。導入の第1段階として、ワクチン接種予約のプラットフォームを実装し、利用者の意見を踏まえながら、第2段階として発信力の強化や各種申請手続きのデジタル化を見据えています。

—実際にソフトバンク社の社員の方は、唐津市とどのような関わり方をされていますか?

DX推進室 岡さん:専門的・技術的側面から、GovTechプログラムの実装に向けた各種調整に尽力いただきました。具体的には、仕様設計に関する助言、導入までに起こると予想される問題への先回り、ベンダーとの合意形成に至るまでの意思疎通に関するアドバイザー的役割を果たしてくださいました。導入後は引き続き技術的なサポートと、各業務担当がイメージするLINEを活用した情報発信について、ベンダーとの橋渡し役を担っていただいております。

ソフトバンク社 鐘ヶ江さん:2021年1月より「地域活性化起業人」を利用して、唐津市役所へ社員が出向しています。目的は、業務のデジタル化支援、IoT活用支援、市政情報発信強化の支援などになります。出向当時、唐津市様ではワクチン接種予約システムの導入を検討していましたが、システムの規模(AIやチャットボット機能)や、価格面で不安を抱かれていました。もともとLINE公式アカウントを持っていたので、GovTechプログラムの利用で安価に予約システムが構築できることを地域活性化起業人から唐津市様へ提案し、採用されたものになります。導入に至るまで、カレンダー設定、帳票作成、運用面のサポートを行っていました。導入後は大きなトラブルもなく、無事に運用されているところです。今後は、ゴミ出しや防災情報などを順次情報発信する予定で、引き続きこれらのサポートを行っていきます。

必要な情報が必要な方に届き
住民からの反応も上々!

—実際にGovTechプログラムを導入し、LINEを活用することで、どのような効果や利点がありましたか?

DX推進室 岡さん:ワクチン接種予約の案内や、令和3年10月31日に行われた選挙の情報について、選挙会場や時間を案内することができ、積極的な情報発信という面は達成できたと思います。今後は情報の種類を増やすことで、さらなる利用拡大を期待しています。

—特に強く感じられたメリットはありましたか?

DX推進室 岡さん:一番のメリットは、必要な情報を必要な人に適切なタイミングでお知らせできることです。

—職員や住民の方から、どのような反響がありましたか?

DX推進室 岡さん:各業務担当者から「自分たちもこういう情報を発信したい」という相談を受けており、一定の反応がありました。また、市のLINEアカウントには、既に29,122人ほど(2021年12月28日現在)が友だち登録されており、市民の方からの反応は上々と感じております。

デジタルを活用しながら
「コロナ禍」に打ち勝つ

佐賀県唐津市による自治体LINE公式アカウントの活用事例。スマート公共ラボは、LINE公式アカウントを活用し自治体業務のDXを実現できるサービス。広報をセグメント化した情報発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報のお問合せや、コロナワクチン予約システムによる各種申請・予約などの自治体業務をデジタル化することができます。
保健医療課 石崎翔平氏(左)、中村千秋係長(右)

—新型コロナワクチンの接種予約でLINEを活用するにあたって、どのような課題や悩みがありましたか?

保健医療課 吉岡係長:接種券をどのタイミングで発送するか、予約受付をどうやってスムーズに行うか、状況が刻々と変わる中、問い合わせへの対応をどのように行うかに苦心しました。

佐賀県唐津市による自治体LINE公式アカウントの活用事例。スマート公共ラボは、LINE公式アカウントを活用し自治体業務のDXを実現できるサービス。広報をセグメント化した情報発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報のお問合せや、コロナワクチン予約システムによる各種申請・予約などの自治体業務をデジタル化することができます。
実際に配布された「新型コロナワクチン接種」に関するチラシ類

—実際に、どのようにLINEを活用していますか?

保健医療課 吉岡長:予約受付と接種会場や、日程の案内に活用しています。

—LINEを活用することで、課題や悩みは解決されましたか?

保健医療課 吉岡係長:予約受付についてはほぼ解決しました。当初は、Webを使うか、LINEを使うか迷っていましたが、Webは予約の殺到によるサーバーダウンの可能性から、LINEに決めました。実際にLINEを導入してみて、サーバーダウンはありませんでしたが、予約開始直後はアクセスできにくい状況が起こりました。また、データ取込、抽出方法がユーザーフレンドリーではなく、手間取った感はあります。

—5月の新規公開から10月時点で友だち登録数が2.8万へ伸びたそうですが、実行された施策はありますか?

保健医療課 吉岡係長:LINEでのワクチン接種予約を推奨したのが一因と思われます。

佐賀県唐津市による自治体LINE公式アカウントの活用事例。スマート公共ラボは、LINE公式アカウントを活用し自治体業務のDXを実現できるサービス。広報をセグメント化した情報発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報のお問合せや、コロナワクチン予約システムによる各種申請・予約などの自治体業務をデジタル化することができます。
ワクチン対策室にもORコードが掲示されている

「ドライブスルー抗原検査」も
混乱なくスムーズに実施

—報道でも大きく取り上げられましたが、ドライブスルー抗原検査の実施を決めた理由や、想定していた課題や懸念点を教えてください

佐賀県唐津市による自治体LINE公式アカウントの活用事例。スマート公共ラボは、自治体業務のDXを実現できるサービス。広報をセグメント化した情報発信から、AIチャットボットを活用しごみ捨て情報のお問合せや、コロナワクチン予約システムによる各種申請・予約などの自治体業務をデジタル化することができます。
ソフトバンク社 佐藤伸行氏(左)、唐津市 保健医療課 中村千秋係長(中)、石崎翔平氏(右)

保健医療課 吉岡係長:唐津市において、感染力の強いデルタ株感染者が急増したことを受け、早急に拡大をくい止める必要があると考えました。そのためには、感染者の早期発見が有効であり、早期発見のためには市民の方に気軽に検査を受けられる仕組みが必要だと思い、医師会などの協力を得て「無料の抗原検査」を実施しました。

 課題としては、ウォークスルー検査を予約不要としたため、検査数の想定が難しかったことと、検査対象を「発熱等の風邪症状がなく、感染に不安を感じている方」としたにもかかわらず「体調が悪い」と、検査会場に来られた方もいて、一部混乱があったことです。また、一度会場の駐車場に入庫すると、時間に余裕のない対象者が途中出庫したくても、会場スペースの問題で出庫ルートの確保がなされていなかったため、出庫の案内に手間取ることもありました。加えて、屋外ということで猛暑の中、防護服を着て作業を行う看護師の熱中症の恐れなど、身体的負担も大きかったです。

 懸念していたのは、個人のプライバシーに配慮し、あえて本人確認を簡略化したため本人の申し出のみで受付し、詳細な住所を把握しなかったので、後日問い合せの必要が出た場合に本人と連絡がとれるかが心配でした。

—実際に告知から予約、検査に至るまで、LINEを活用されてみていかがでしたか?

保健医療課 吉岡係長:予約状況を把握でき、検査の進捗管理に役立ちました。ウォークスルー検査は思ったほど検査数が伸びず、検査の実施体制への影響は少なかったです。ドライブスルー検査初日はやや混乱したものの、2日目以降、大きなトラブルは発生しませんでした。

「防災情報」がひと目で分かり
ご高齢の方からも好評

—従来はどのような手段で防災情報を配信していましたか?

危機管理防災課 田中係長:これまでは、登録制の災害情報メール、市のホームページ、行政放送、防災行政無線などを活用して防災情報を配信していました。配信することが多いのは、大雨警報などの気象警報が発表された場合に発令する避難情報です。

—従来の、防災情報の発信方法には、どのような課題や悩みがありましたか?

危機管理防災課 田中係長:防災情報を配信するためのツールが多くなるにつれて、職員の手間が増えることが挙げられます。また、実際に配信している情報は「文字情報」ですので、市民の方がどれだけ理解して避難行動を取っていただいているかが不安でした。

—唐津市で特に気をつけるべき災害や、最近の事例はありますか?

危機管理防災課 田中係長:唐津市は、県内でも土砂災害の危険区域が最も多く指定されており、大雨が降ると、山間部では土砂災害が発生します。また、大きな河川もありますので、河川の氾濫にも警戒しているところです。最近では、雨の降り方が短期間に大量に降ることから、内水氾濫も発生しています。

—実際に防災情報をLINEで配信されてみて、いかがでしたか?

危機管理防災課 田中係長:LINEでの避難情報は、ひと目でどの避難情報が発令されているのかを理解できるようなリッチメッセージで配信しています。また、避難情報と一緒に、①開設する避難場所情報、②現在の気象情報、③危険度分布情報のリンクをリッチメッセージで配信するようにしました。画面をタップすると、必要な情報を入手することができ、伝えたい情報を配信することができるようになりました。これは、防災研修を地域で開催した際、ご高齢の参加者からも「LINEは分かりやすい」と好評でした。

「DX推進」で職員の負荷が減少し
市民サービスはさらに向上していく

—今後は唐津市として市民の方に、どのようなベネフィットを提供したいと思われていますか?

DX推進室 岡さん:必要な情報を必要な人に届けることで、全ての市民がサービスを漏らさず享受できるようにしたいです。

—また、今後のソフトバンク社と唐津市との関わりにおいては、どのような展望がありますか?

DX推進室 岡さん:まずはLINEを使った情報発信強化から始めましたが、今後は、庁内の業務を洗い出し課題を抽出した上で、それらの課題に対してソフトバンク社様が持つ専門的知見から解決策を提案していただき、庁内のデジタル化と自治体のスマートシティ化を推し進めたいと思います。

ソフトバンク社 佐藤さん:社会のデジタル化、DX化は避けて通れないものと思います。それは唐津市様しかりだと思いますが、デジタル化はほとんど進んでいません。まずは職員の業務を見える化、分析し、デジタル技術の導入支援を行い、業務効率の向上を目指します。業務効率が上がれば、市民対応に費やす時間も増えるので、市民サービスも向上されます。また、地元事業者にもデジタル化の促進ができればと考えています。自治体、市民、事業者など唐津市全体が活気あふれる地域になるよう、支援していきたいと思います。これらは、ソフトバンクが掲げるSDGsの活動にもつながるものになります。

GovTechプログラムの導入前から導入後も、ソフトバンク社の社員が唐津市に寄り添い、きめ細やかにサポートをしている姿勢が印象的でした。唐津市のように総務省の「地域活性化起業人」を活用し、デジタルに強い企業と一体となってDX化を推進していくケースが、今後もますます増えていくでしょう。さまざまな事情を抱えている自治体にとっても、今回伺い知ることのできた多くの実例が参考になりそうです。

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